ヨミ

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《ねえ、魂の電子化って、実際にどうするの? 魂って目に見えないし、触れることもできないよね?》  アカリは組んでいた腕をほどき、ヨミをジッと見つめる。彼女の瞳には、純粋な好奇心が宿っているように見えた。  女の人に不慣れなヨミは、アカリの視線に恥ずかしさを感じつつも、彼女から目を逸らさず口を開いた。 「えーっと、その……月の石があればすべて解決するんです」 《え? 月の石って、プログラムで作られたアイテムじゃなかったの?》 「はは、ゲームのアイテムみたいですよね。でも、実在するんですよ」  ヨミはそう言いながら、机の引き出しから小さな丸い石を取り出した。それは彼の掌にすっぽりと収まる大きさで、表面は滑らかで光沢があった。 「これが月の石です。僕の祖父の実家の近くにある古い洞窟でしか採取できない、非常に貴重な石なんです」 《古い洞窟? ヨミお爺さんってどこに住んでたの?》 「祖父の実家は緑豊かな山々に囲まれた、霧がかかる小さな村の神社です。僕の実家は山から降りた先にある、人の多い町ですけどね」  ヨミ曰く、太古の昔から存在し、荒ぶる魂を安らかに成仏させるために用いられてきたという月の石には、3つの不思議な力を持つと言われている。  魂を封じる。  魂の状態を色で知らせる。  魂の荒ぶりを抑える。 「……と、まあ、今の話で大体お察しかもしれませんが、この月の石があれば魂を捕らえる事は可能なんです。石は本来ガラスのように透明ですが、魂を封じ込めると色が付きます。これは石の中の結晶が魂のエネルギーを反射しているからです」  アカリは黙ってうなずき、ヨミの手のひらにある月の石をじっと観察した。その石は白と黒で半月を表現していて、透明感はなかった。
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