サイドA  生き残りをかけて

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 正樹は加奈子を失った辛さを忘れようとする為に一人、自室に籠りレポートを纏めていた。ほとんど部屋を出ることをしない。狂ったように資料を読み漁る。ただ一点どうしても上手くいかずにいた。それは外に出ることが出来ず、取材がままならないということだ。 「このままじゃありきたりの文章しか出来上がらない」  正樹は頭を掴みキーボードに突っ伏した。勝手にボタンが押されいくつかの意味のない記号が打ち込まれた。 「いけない、いけない」  正樹は丁寧にその文字を消した。環境問題に取り組みレポートを書いている。海洋汚染、大気汚染、そして土壌汚染。すべて人類が発展の名の元に行ってきたことだ。もしこのまま人類がKウィルスに滅ぼされればどうなるのだろうと考えた。環境を破壊するものが無くなるのだ。当たり前のように失われた時間が取り戻せるのだろうと考えた。  正樹はキーボートに指を置きある文章を何気に入力した。  ──このままKウィルスに人類が滅ぼされれば環境問題は簡単に解決する──  正樹は笑った。 「こんなレポート提出したら編集長にぶっ飛ばされるだろうな」  へへっと笑いながら正樹はスマホを取りだしネットニュースを見た。 「えっ?」  そこにあるニュースが飛び込んできた。  ──K3ウィルスに対抗するホープワクチンⅢ型開発に成功── 「とうとう、やったのか? 彰」  ニュースを見て正樹は彰に連絡を入れた。
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