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「所長なんて言ってきました?」
助手の城下雪は聞いてきた。彰は両手を広げかぶりを振った。
「良く分からないってのが正直な感想だ。まるで人類が滅ぶのを待っているようなさぁ……」
「所長、どうしたんだろう……」
彰は一部始終を雪に話した。
「所長の言っていることは分からないではないんだけど。確かに私たちはこの星を汚し過ぎたのかも知れない。でもそれでも生きている限りは抗いたいもの」
雪はそっと後ろから彰を抱き締めた。それは愛おしくも優しい抱き締め方だった。
「雪……どうした?」
「私、もしこの世界が滅んでしまう時があったら、その時を迎える時が来たらあなたの側にずっといたい……だめかな?」
彰は雪の手に自らの手を重ねた。
「そうだな……その時は一緒にいよう……だけどそうならないために俺は最後の最後まで抗う……雪を守るために」
雪は哀しく微笑んだ。
「ありがとう……私も最後まであなたの助手としてあなたと共にいるわ」
二人には希望のない絶望の世界が見えているようだった。
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