サイドB 賭け

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サイドB 賭け

 若干安静を取り戻した葵唯。意識は戻らないが脈拍は安定している。冴子はその間、に両親に現状を報告し、プレベサルバについて話す決意をした。もちろん、これは一種の賭けであり反対されれば投与することは出来ない。私がもし葵唯ちゃんの親なら……多分拒否する可能性が高いと思いながら……。  両親にリモートで連絡を入れる。現状を報告した。両親は涙を流しているのが画面越しにでも分かる。その気持ちが伝われば伝わるほど冴子は気丈に振る舞った。本題に入らなければならない。 「今の状態は遅かれ早かれ葵唯ちゃんの命が持ちません。但し助かる可能性はひとつだけあります。もちろんこれも助かる可能性は限りなく低いです」 「それは……?」  父親は低い声で聞いた。母親は黙っている。 「今、一応完成したプレベサルバという新薬があります」 「じゃあ、それを……」  父親が言いかけたが母親が口を挟んだ。 「でも危険なんですよね? 一応って言うくらいだから」 「はい。これは体内の温度を発熱により一気に四十ニ度ほど上昇させます。これにより突然変異したイロウ細胞はほぼ間違いなく死滅すると思われます。しかし、この体温上昇は他の細胞にまで影響を及ぼすのです。不可逆的反応つまり正常な細胞が正化学反応で細胞内のタンパク質が凝固作用を起こしたり生命の危機にさらされます」 「そんな……」  母親は絶句した。 「その他にも様々な問題が生じ、例え助かっても後遺症が残る恐れも考えられます」  冷静に伝えれば伝えるほど冴子自身がいたたまれなくなった。  ──こんな辛い可能性しかないなんて──
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