サイドA 発症

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 新たなワクチンの開発はなかなか進まなかった。中途半端に仕上げてもそれこそ自分達の首を絞めかねないと彰は思っていた。 「こんつめないでくださいよ、はいお茶です」 「ありがとう」  助手の(ゆき)がお茶を持ってきてくれた。雪とは同僚以上恋人未満的な関係だ。お互い思い合ってはいたが二人ともこの研究所にいる以上それ以上は踏み込めずにいた。もちろん同じ職場ということもあったが、それ以上にKウイルスを扱う以上いつ簡単に命を落とすか分からないからだ。 「どうですか?」  雪は心配そうに聞いてきた。 「そうだな。若干の結果を残すことは出来たんだが、ただこれを世に出せば近い将来K4が出て来ると思う。段階的に強くなっているKウイルスには危険だ。それこそ人類は終わりを迎えてしまう」 「そうね。この発熱を速効で押さえる効果が出れば。あくまで通常の風邪くらいの平均値の発熱であれば……」 「あぁ、細胞が四十二度越えれば不可逆的反応を起こして死につながる可能性がある。身体を守るための発熱のメカニズムを壊すこのウイルスにどう対応するか、そこなんだよなぁ」  しかし、彰は諦める訳にはいかなかった。加奈子を始めこの研究所内で戦い散った同僚やそして自分達の開発を待っている人たちのためになんとかしなければと頬を叩いた。
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