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少年と祖父
「私は森の魔女様の下におりますものでございます。どうぞ、国王陛下への目通りを。これは、証にございます」
城への道は、母が教えてくれた。
付き添うと言う母に、むしろ一人の方がと説得をし、単身で城の前に立ったアカゴ。
少年が、一人で? と不審に思う門の見張り番に、アカゴは証たる黒の魔石を見せた。
見張り番は、魔法に長けたものではない。
腕に覚えのある騎士であった。
だが、黒色の魔石を事もなげに扱う少年。
しかも、魔石の黒色が、濃い。
魔女様の魔石ではなかろうか。そう思わずにはいられなかった。
さらに、少年にはどこか優雅な雰囲気もある。
考えれば考えるほどに、魔女様のお遣いとしか思えない。
城にお遣いがみえるのは、ごくごく稀なこと。
本来ならば、貢ぎものの受取への謝意を示された手紙を渡しに従魔かそれに準ずる存在が来られるくらいのやり取りである。
それが、魔女様の側からであるならば。
一大事だ。
「魔女様の遣いがお見えに!」
見張り番が緊急を知らせる喇叭を吹き、城内を伝令が走る。そして。
「陛下が、お会いになりますと」
国王に届くのも、あっという間であった。
「よくぞここまで」
平凡とも言われる国王だが、それはつまり、侵略をするような王ではないということ。
王座から座して迎えてもらえたことに、アカゴは安堵した。
『御寝台でなくてよかった』と。
「国王陛下、失礼ながら、お身体にこの魔石を触れさせてもよろしいでしょうか」
「ご随意に」
アカゴは、人を癒す魔法を習得しているわけではない。
だが、魔女様の魔石は、何かを教えて下さるに違いない、アカゴはそう信じていた。
すると、王の胃の辺りで、魔石の黒色が少し変化した。アカゴにしか分からないほどに。
「陛下にお伺いいたします。毎日欠かさずにお召し上がりになるものなどはございませぬか」
アカゴの問いに、周囲のもの達が、会話を始める。
すると、最上位の侍従が一礼をし、それに対して国王が頷く。
そして、侍従はアカゴに伝えた。
「恐れながら、申し上げます。王太子殿下がお渡しになる薬がそうでございます」
「ならば、そちらをお見せ頂けますか」
再び国王が肯くと、麻袋に入った薬が丁重にアカゴに渡された。
『魔女様、お願い申し上げます』
アカゴは薬を一つ、魔石にかざした。すると、魔石が薬を吸い込んでいく。
「国王陛下、この薬を魔女様がお調べ下さいます。もしもの時には」
「……分かりました、御遣い殿」
国王は、静かに、何かを決意したように頷いた。
すると、お止め下さい、の声も聞かずにこちらに向かう不心得者が現れた。
「魔女様のお使い? 本物か?」
この声。
初めて聞くのに、この上なく不快なそれは。
不心得者の正体は、アカゴには、すぐに分かった。
……王太子だ。
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