少年と魔女

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少年と魔女

「魔女様、発言をお許しください。この罪人の命を絶たれましては、その罪を明らかにできませぬ」  王太子は氷柱の中。  あたかも、躍動感のある彫像のように氷結していた。  第二王子の言葉に、魔女は確かに、と納得をした。  このままでは、罪を明らかにすることも、苦しむこともなく……となってしまう。  賢い血族が、アカゴの近くに存在してくれている。  ほかのものたちも、皆アカゴのことをあたたかく迎えてくれそうであった。  魔女は、それを嬉しく感じた。 「よくぞ申してくれた。では、これでどうだ? 半日も過ぎれば、全体も解凍されようぞ」  頭部の氷のみ溶かし、息だけはできるように。氷全体の温度も、体温を奪いすぎないように調整されている。 「なんと素晴らしい……」  偉大なる森の魔女の、細やかな魔法の技に、皆が感嘆する。 「ありがたきご配慮。……では」  国王が、少しの間を置き、声を張る。 「この王国において森の魔女様に逆らいしは、王太子と雖も厳罰である。また、此奴(きゃつ)は元第五王子強襲の黒幕であった。これは偽りなき、自供ぞ! あの貴族と共に、下級牢へ!」  厳しい口調で申し付ける。  王太子は氷柱のまま、台車にのせられた。  さらに、近衛兵と王子達が周囲を固める。 「魔女様には礼の言葉もございませぬ。ですが、よろしかったのですか」  人払いをさせたあと、国王は、頭を下げる。  王とはいえ、この国の民の一人。  森の魔女にならば、許される行為であった。 「構わぬ。私はただ、貢ぎものに紛れしを保護したのみであるゆえ。だが、王宮に住まうものが黒幕とはな。森の魔女は王宮とは拘わらず、を使われた。道理であの貴族の裏側を探れなかったわけだ。それにしても、我が黒の魔石を通じて、森に全てが筒抜けとも知らずに自供をしてくれるとは。王族が魔石を通じて薬を渡してくれたからこそだ」 「足りぬところはあります王太子でしたが、父の為に薬を、という行いが嬉しく。真逆の意図、体調の変化で気づいてはおりましたが……」 「それでも、国王よ。其方は己の身体で奴の罪を明かそうとした。それは親の情よりも、奴に王位を渡さぬという決然たる覚悟を優先したということだ。誇るがよい。そして、よき祖父でよかったな、殿。懸案が晴れし今、堂々と王宮に戻りなさい」  魔女様、なにを。  僕が薬をお送りするよりも前から、全てをお聞きになっていらしたのでしょう?  魔女様は、いったい、なにを仰っているの?  アカゴは驚きのあまり、声も出せない。 「魔力を隠さずとも、この血族は優しかろうて。そうだ、国王、解毒薬は王族の母に頼むとよいぞ」 「ありがとうございます」 「。ならば、なおのこと、王宮に。励めよ、。……さらばだ」 「魔女様……? 魔女様!」  魔女の姿は、登場と同様、忽然と消えた。  これは、まさしく、伝説級の大魔法、転移魔法。  残りしは、ひらりと舞う、紙一枚。  まさしく、国王の解毒薬の調合法であった。
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