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静かなパニック
私は昔から、考えていることがよく分からないと言われてきた。
表情があまり変わらないせいなのだけれど、だからって感情がないわけじゃない。
そんな私でも、顔に出ない方がいい時もあって。
幼いころから暗い場所が苦手な私は、高校生になった今でも暗闇が怖い。
夜に出歩くなんてもってのほかだし、突然の停電でも心臓が縮み上がる。
だけど、パニックになっているのを見せて相手を心配させたくない。こういう時に表情筋が死んでいるのはむしろラッキーだと思う。
「でさ、その階のボス倒すだろ? そしたら隠し扉があんの! 素材がめちゃくちゃ手に入るから行ってみ、マジで!」
なんて楽しそうにゲーム情報を教えてくれるのは、前の席に座っている日南隆良君。
無表情がデフォルトの私とは違って、コロコロと表情の変わる人だ。ゲームの話が合うため、よく話しかけてくれる。
「昼休みにやってみるよ」
「おう! 俺もやるから協力プレイしよーぜ。その方が早く終わるし!」
「助かる」
私の短い答えにも、日南君は満面の笑みで頷いてくれる。
その反応が嬉しくて、私はいつしか彼に惹かれていた。
だから、彼にだけは。日南君には、誰よりも心配をかけたくなかった。
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