1人が本棚に入れています
本棚に追加
「本当に大丈夫か? 調子悪い?」
「全然、何ともない」
嘘。本当は吐き出す息が震えている。手が小刻みに震えている。今にも涙が出そうで落ち着かない。
自分でもパニックになり始めていることに気付いている。なり始めているというか、もうなっているというか。
ダメだ、思考が纏まらなくなってきた。
「なぁ、やっぱおかしいって」
「なんでも、ないよ。大丈夫だから」
平静を装いたいのに、声が震えてしまった。
気付かれてしまう。心配をかけてしまう。迷惑をかけてしまう。
無表情で不愛想な私にも笑って話しかけてくれる彼に、嫌われたくない。
怖い。
暗いのが怖い。
嫌われるのが怖い。
怖い、こわい、こわい……。
「ちょっと待ってて」
小さな声が聞こえ、日南君が席を立った。
どこへ行くのかと目で追っていれば、日南君は先生がいる教卓へ向かった。先生に何か話している。先生がこっちを見た。日南君に視線を戻して短く何かを言いながら数度頷いた。
日南君が戻って来たかと思えば、私の手を取って立たせた。
「え、ちょ」
私は訳が分からないまま、教室の外へ連れて行かれた。
最初のコメントを投稿しよう!