静かなパニック

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廊下に出た途端、眩しさに目が眩んだ。 目を細めて数秒。 明るさに目が慣れたころ、まだ私の手を握っていた日南君を見上げた。 「あ、あの」 「どうする? 保健室行くか、それとも他の場所で時間潰すか。どっちがいい?」 他のクラスが授業中なのを気にしてか、日南君は小声で訊ねてきた。 「あの、本当に大丈夫、だから」 「まぁまぁそう言わずにさ。あ、そだ。スマホ持ってる?」 「スカートのポケットにあるけど……」 にぱっと笑っている日南君の言いたいことが分からず、とりあえず質問に答えることしかできない私。 日南君は握っていた私の手を引っ張って、教室の隣にある階段を上っていった。 屋上の前の踊り場で足を止めた日南君は、そのままその場に座り込んだ。私の手をくいくいと引っ張り、座るように促してくる。 「ほらほら、スマホ出して。さっき言ってたボス戦いこーぜ」 いつの間にか日南君はスマホを取り出しゲーム画面を開いている。 「でも、授業……」 「えぇー。あの映画字幕小さすぎて読むの疲れたし。かと言って英語分かんないし」 日南君はつまらなさそうに肩を竦めた。 否定はしないけど、だからってサボるのはどうなんだろう。いや、私のせいだけど。
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