ブラックヒーロー

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 ブラックたちの足元に水をまいて水たまりを作った。その上に怪人が思いっきりジャンプをすると泥水が全員に跳ねる。 「ぐわああ!? き、汚い!」 「金属製の黒って白と同じくらい汚れがめちゃくちゃ目立つ色なんだよ。お前ら車で黒い色がなんで人気ないのか知らねぇの?」 「知ってるけど! わざとやるなよ性格悪いな!」 「怪人だからな。やーいきったねーみっともねー、洗車機行ってこい泥んこどもめ」  悔しがるブラックたちを尻目に再び何か別のハンドサインをすると、エプロン姿の部下が一人走ってきた。どうやら昼食を作っている途中だったらしい。怪人に何かを手渡す。  コンコン、ぱかっ。じゅー。 「あ、やめろよ俺の肩当て(ショルダーアーマー)で目玉焼き焼くなよ!」 「100円ショップに売ってるミニフライパンにしか見えん」 「地味に傷つくこと言うなよ!」  ちょうど腹減ってたんだよと言って醤油もかけた。醤油の焦げる良い匂いと、じゅーと美味しそうな音がする。 「やめろって落ちなくなるだろ!」 「動くな、目玉焼き落ちるだろうが! 卵一つさえ食べられない子がいるのにヒーローが食べ物無駄にするのか!?」 「う!」  固まったヒーローをほっといて、怪人は焼き上がった目玉焼きを美味しそうに食べる。焦がし醤油がとても良い仕事をしている。ちなみに怪人は黄身硬焼き派である。 「汚れた! クリーニング代よこせ!」 「クリーニング屋さんに迷惑かけんな、防具は対象外だ」 「落ちなかったらどうすんだよこれ!」 「そのまま焦がしとけよ、どうせ黒だから目立たないだろうが。重曹つけて磨くかお日様に当ててぱりぱりにすると落ちるからほっとけ」  すると仲間のブラックたちが一歩前に出る。 「防具を汚すとは許さん!」 「結構お金かかってるんだぞ!」 「毎日磨いてるのに!」 「知るか、黙れブラジャーども」 「妙な略し方するな!」 「すっごい傷つく!」  令和のヒーローはメンタルがわたあめ並らしい。部下たちがそれに気づき、ひそひそ何か相談し始めた。 「イー!」  部下が怪人に何かを提案したようだ。ブラックたちには「いー」にしか聞こえないので会話の内容はわからない。それを察したらしく怪人はきちんと解説をしてくれた。 「みんなで卵を投げつければこいつら泣きながら帰るんじゃないかって言ってる」  ブラックたちはぎょっとして二、三歩後退った。はっきり言ってそれはショックで三日間寝込むレベルだ。 「あいつらにも言ったけど、食べ物を粗末にしちゃいかんぞ」 「イー……イー!」 「わかればよし」  頭を撫でられまんざらでもなさそうな部下。一体何を見せられているのかよくわからないが、とりあえずめっちゃ仲良しさんということはわかった。ちなみにエプロンつけた部下はアジトに戻っていった。
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