第一章 鷹村 翔太

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 そのたびに腕時計を見て、時間を確認する。三時まで、あと二十分ほど残っているのを見て、安堵する。買い物を済ませて自分の脇に買い物袋を置いている。今日はたまたま足の早い食材を買っていなかったので、こうして公園に寄り道できていた。  隼也は公園の砂場でおとなしく山を作って遊んだり、子供達に混ざって滑り台で遊んだりしている。その姿を認めて、また茫洋と公園や空を眺めた。  次の瞬間、顔を上げて隼也の姿を探した。また気を失っていたようだ。時計を見るともうそろそろ三時になろうとしていたので、隼也に帰ろうと声をかけようと思い、立ち上がって買い物袋を片手に持った。  確か、滑り台のある遊具で遊んでいたはずだと思い、周辺に寄っていって、隼也を探した。 「あれ?」  思わず声が出た。隼也の姿が見当たらない。付き添いの母親たちがいるので少し恥ずかしくはあったが、声に出して隼也を呼んだ。  何度呼んでも隼也は現れない。  公園はそれほど大きいところではないので、ぐるりと巡った。砂場にも遊具にも隼也の姿はなかった。  まさか、公園から出てしまったのだろうか。隼也は家までの道を覚えているはずだから一人で家に戻ったのかもしれない。  慌てて道路に出て、家に続く道の先を眺めた。通行人の中に隼也の姿はない。腕時計を見てみると後何分かで三時になる。急がないと三時を過ぎてしまうと焦ってしまった。  小走りで一旦駅まで戻った。眺めるだけでは分からないけれど、隼也はいなかった。今度は家までの道を辿る。
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