第一章 鷹村 翔太

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「大丈夫ですよ。でも、遅くなりそうでしたら今度からは電話をください」  これからは三善さんに頭が上がらない。きっと、かなりタイトなスケジュールになっているだろう。申し訳なくて何度も頭を下げた。  玄関で三善さんを見送り、私はダイニングに買い物袋を置きに行った。中身をテーブルの上に出していると、買ったばかりの卵がいくつか割れていた。  それだけのことで、今日一日ついてないと気持ちがモヤモヤしてくる。リビングの隼也と母に目をやる。  二人並んでソファに座っている。隼也が持って来たゲームで遊んでいて、母はテレビをじっと見ていた。  三善さんが帰ってしまうと、家の中の雰囲気が変わった気がする。明るく笑う三善さんに私の緊張が(ほど)けるからかもしれない。助けがあるというのは、本当に頼りになるものだ。 「隼也、今日はオムライスにしようか」  割れた卵をボウルに移しながら話しかけた。  返事がないので、隼也に目を向けると、私に顔を向けてニコニコしていた。 「オムライス好きだもんなぁ」 「うん!」  さっき、私を死ぬほど困らせたけれど、こうして隼也の笑顔を見ると、心が和やかになった。  ふと目を覚ますと、真っ暗な部屋に橙色の豆電球の明かりに浮かび上がる天井が見えた。  今何時だろうと、枕元に置いたスマホを手探りで取り、見てみる。母を寝かしつけて布団に入ったのが午後十一時。まだ一時間しか経っていない。  何気なく隣に寝ているはずの隼也の様子を窺うと、布団がめくれて、息子の姿がない。
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