いざ、立ち入り禁止区域へ

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「残念ながら……それは分からない」申し訳なさそうに、リュウセイは言う。 「まさか、自分がその試練を受けることになるだなんて、夢にも思ってなかったから……そこまでの話は、聞いてない。ボクが聞いたのは、ここまでの話の通り、概要までだ」 「そうか……で、ござる」ケンタロウは腕を組み、残念と言わんばかりに鼻から息を吐く。  真面目な顔をして、右手に日本刀のキーホルダーを持っているのだから面白い。 「ねぇ」ここで、アカリが口を開いた。 「だとするとさ、次々に襲いかかってきた、猛獣たちが関係している可能性ってない?」 「……ふむ……」ソラが顎に手を当て、彼女の話に耳を傾ける。 「普通に考えてよ? 普通に。しんしんと降り積もる雪の大地。戦いにくいよね? その上で、次々襲い来る猛獣たち。しかもその猛獣たちは、おおよそ、日本の山にいないような猛獣ばかり。これってさ? 全部神の試練だったと考えれば、辻褄が合わない?」 「…………確かに」と、ソラは頷いた。 「そもそも論の話をするね? ほら、あたし達って、強いじゃない?」 「は?」 「いやいやいや、どこの世界に、猛獣たちと一対一の喧嘩を……殺し合いをして、勝てる小学生がいるのよ。普通は、良くて逃げ切るか……最悪、食い殺されるのが関の山でしょ?」  どうやら、自分たちが異常という認識は、少なくともアカリにはあるようだ。 「最近テレビで、日本各地で熊が出没して、殺す殺さないの議論を報道してたりするじゃない? 正直、あたし達の誰もが思ってるでしょ? 『え? 熊とか適当にあしらってたら、勝手に逃げてかない?』って。そう思えるのって、異常なんだよきっと」 「……ふむ……確かに、そうなのかも」ソラが思考しながら納得した。 「それをさ、試練の話に当てはめるとさ、これって、一般の人たちから見たら、とてつもない程厳しい試練なんじゃない? 本来――襲い来る猛獣たちを倒すんじゃなくて、逃げ切る試練だったんじゃ……」  逃げ切る試練。  足場の悪い、雪の大地の上で。  死なずに、生き残り切る試練。 「そう考えるとさ……答え出ない?」
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