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ここは天命山。
日本に存在している、とある山。
山とは言っても、この平成の時代だ、道はある程度舗装されているし、立っている家々はそれなりにしっかりとした建物も多い。
ちゃんと車も走っているし、コンビニだってある。
ガソリンスタンドもあるし、書店やホビー店、雑貨屋などもある。
山である以上坂道が多いことや、都会と呼ばれる街へ出るためには車で一時間近くは走らなければならない......等といった難点がいくつかはあるものの、こと生活を送る上で、困ることは何一つもない。
この山にあるものだけで十分だ。
むしろ、あちらこちらの家が田んぼで米を作っているため、非常にお米が美味しい。
昔ながらの山々しい自然に、程よく近代的な街並みを融合させた、丁度良い山――それが、天命山である。
そんな天命山に位置する、天命村。
人口約2000人が住むその村には、とある伝説があった。
天命村の奥。
すなわち、天命山の頂上付近には立ち入り禁止区域があって、その果てにある古びた神社の中に、とある書物が隠されている――という伝説が。
その書物の中には【神様の降臨術】が記されている、との噂だが……眉唾物の話である。
実際に、天命山の頂上付近には、立ち入り禁止区域は存在する。
しかしそれは、その先に熊が出没し易いエリアがあったり、道が舗装されきれてなく激しい傾斜があるため転落の危険性があったりなどなど、現実的な危険が伴うがために、立ち入り禁止にしている――というのが、真相のようだった。
少なくとも、村の大人たちは皆、口を揃えてそう言う。
あの伝説はデマだと。
誰かが、あの立ち入り禁止区域のことを面白おかしく言っただけだと。
【神様の降臨術】なんてものがあってたまるか、と。
だから絶対に、あの立ち入り禁止区域には近づくんじゃないぞ――と。
大人たちは皆、口を揃えて言う。
不自然なほどに。
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