いざ、立ち入り禁止区域へ

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「ミカンとすればさー、えぇーってなっちゃった訳なんですよ」蜜柑の咀嚼を終え、ごっくんした後、ミカンが言う。 「ソラランとアカリンが、立ち入り禁止区域に入っちゃう、あのやり取りの直前までさ、ミカンとケンケンとリューリューは、それなりにエモいやり取りをしてた訳」  ケンタロウがしり込みしていたのを、ミカンが手品で励ました一件である。  その直後に、ソラが内部分裂発言をした。 「あの流れがもし漫画だったらさー、読者のみんな『はぁ?』ってなったと思うよー。勇気出したケンケンとミカンの立場は? ってさー」 「えぇ……」  ミカンのメタ発言じみた苦言に対し、ソラが少し顔を引きつらせる。 「ま、何にせよ、ミカンとしては、まったく心配なんてしてなかったけどねー。何せソラランとアカリンだし、大丈夫でしょーって」 「その割りに、一番最初に駆けつけてくれたのは、ミカン、あなただったけどね」と、アカリが言う。  ミカンが返答する。 「心配しないのと、助けに行くのは違うもんね。親友が傷だらけでライオンに取り囲まれてるんだよ? 普通に、身体が勝手に動いて助けに入るっしょ? 当たり前当たり前」そう淡々と答えて、更にもう一房蜜柑を口に運ぶミカン。 「親友……」アカリは小さく呟いて、フッと笑った。 「ありがとう。ミカン」 「どー致しましてー」  あっさりと、ミカンはそう返答。  そのやり取りを見ていた他の面々も、それぞれ顔を見合せ、笑いあった。 「みんなもボーッと雪の上に立ったり座ったりしてないでさー。コタツ入んなよ、暖かくて気持ちいいよー? 蜜柑も甘くて美味しいさぁ」  ミカンに促され、それぞれがコタツに足を突っ込み、囲う。  各々が机の真ん中に置かれた蜜柑に手を伸ばし、皮を剥き始めたところで、ヒカルが言った。 「そんな訳で、ここから先の立ち入り禁止区域の冒険は、ワイらも同行する。八人で攻略するんや。ええか? ソラ。文句は言わせへんで」  ソラはため息混じりに笑った。 「りょーかい」 「あん? 何やその溜め息は、シバくで?」 「おや? 君がオレに勝てるのかな? ヒカルくん」 「やったろうやないか」 「かもん」  コタツから出ようとする二人を、「まぁまぁ」と仲裁したのはリュウセイだった。
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