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「例えば、リリカのような傷の処置、手当てはオレやアカリにはできない」
「え……」突然話を振られたリリカは、キョトンとしてしまう。
次に、ソラの視線はミカンとケンタロウへ向けられ……。
「ミカンみたいに、上手く手品できねぇし。ケンタロウみたいに、日本刀のキーホルダーを握っただけで、勇気が出せて、木刀の扱いが上手くなることなんてできない」
次に、ヒカルとリュウセイ。
「ヒカルみたいに、エアーガンが百発百中って訳でもねぇし。リュウセイみたいに、動物と仲良くなれねぇ」
最後に、ミオリとアカリへ。
「ミオリのように、バカ力は発揮できねぇし。アカリが扱う『天命式柔術』なんて、到底真似できない」
ソラは言う。
「だけどお前らは――――オレのように、強くなることはできない」
この言葉に対し、ヒカルやリリカがため息を吐く。笑いながら。
「自分で言うなや」
「人のこと、ゴリラみたいに言いよって」
ソラが言う。
「みんなそれぞれに、得手不得手がある。もしもこの試練が、オレの不得手だった場合……きっとオレは死ぬだろう。だから――――助けてくれ」
面々の表情が明るくなる。
互いに笑い合っている。
「逆にお前らの不得手は――――オレが助けるから」
そう言いながら、ソラが右拳を前にかかげる。
何も言わずとも皆、同じように拳をかかげ、円陣を組んだ。
心は一つ。
「全員で、生き残るぞ!!」
「「おおっ!!」」
いざ、次の試練へ。
☆☆☆
立て札を通り過ぎ、先へ進んでいると……。
「あらま、曇ってきちゃったねぇ」ミカンが、空を見上げながら言った。
「すごく真っ黒な雨雲……大雨になりそうだねー」
「そりゃ雨は降るだろう……」と、リュウセイ。
「雨の試練なんだから」
すると、ピカッ! と、眩い稲光。
その直後、ピシャッ! ゴロゴロゴローッ!! という、とてつもない雷鳴が轟いた。
「キャッ!!」咄嗟に耳を塞いでしまうリリカ。
他の者も同様だ。
そして、雨が降り出した。
バケツをひっくり返したような大雨だ。
メンバーの上空には、真っ黒で、不気味にピカピカと時折光る雨雲が覆っている。
降りしきる雨のせいで、八人は瞬く間にずぶ濡れになった。
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