雨と霧と風の試練

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 パシャパシャと、走る度に水飛沫が上がる。  大地は既に、水溜まりでいっぱいだ。    水溜まりを避けようとしても、それは不可能。なぜなら、最早地面全体が水溜まりのようなものだからだ。  それほどの大雨。  八人は、水溜まりの上を走る。 「あーあ、この靴買ったばかりだったのになぁ」とアカリが溜息を吐く。 「仕方がないだろう。命の方が大事だろ? 走ろう」ソラが言った。 「ま、そうなんだけどね」  アカリが渋々納得したようなことを言うと、またしても稲光。  ゴロゴロゴロゴロォーッ!! という轟音と共に、焦げ臭い匂いが充満する。  近くでまた雷が落ちたようだ。  八人の背筋が寒くなる。  次は我が身、かもしれない。  自然と、前へと運ぶ足が速くなる。  まるで、雷から逃げるように走るメンバーたち。  一目散に。  そして、彼ら彼女らは辿り着く。  今度は――――雪の大地ではない。  面々の耳に、とある音が入ってくる。  恐ろしい雷の音ではない。  ザザァ……という、川の流れる音だ。  そう――――目の前に、大きな川が現れたのである。 「こんな所に……川?」リュウセイが疑問を述べる。  雨はまだ、降り続いている。  大雨が。 「な……何か……嫌な予感がしませんか? この大雨の中で、川なんて……」リリカのその言葉に、ミオリが頷く。 「この川を渡れっちゅうことやろ……? うわ……大体この先の展開が読めたわ……」  面々の表情が引き攣る。 「……行くぞ」  先陣を切ったのは、やはりソラだった。  川へと足を踏み入れる。  次にアカリ、リリカ、ミオリが続く。 「せ、拙者、泳げないのだが……仕方あるまい……」 「大丈夫! その時はワイが助けたる」 「ヒカル殿……かたじけない」  次にケンタロウとヒカル。 「……ミカン、大丈夫か……?」 「平気平気っ! ミカンも泳げないけどっ、いざとなったら手品で浮き輪出すから大丈夫っ!!」 「……そっか、でも……」  リュウセイが、ミカンの手を取る。 「コレくらいは、させてくれ」 「リューリュー……」  ミカンは頬を赤らめ、目を見開く。 「もうっ! 相変わらず大胆だなぁ〜! リューリューは……――――」  その時――――  ズズーンと、大きな音が鳴り響いた。
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