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「私、休みの日は家に引きこもって本ばかり読んでるんです。だから、そんな私を心配したお父さんが、そっと私から本を奪って、ゲーム機を渡してくるんです。こういう面白いも経験しなきゃダメだぞって」
「何やそれ、めっちゃ良いやん! 良いオトンやんけ!!」即座にミオリが反応した。
それに苦笑を続けながらリリカは言う。
「そんなに良くありませんよ……私は、本が好きだから本を読んでる訳ですし。逆にゲームはあんまり得意ではないですので……」
「でもでもでも! 親の方からゲームしろって言われるんでしょ!? めっちゃ良いじゃんっ! 羨ましぃ〜!!」ミカンが目をキラキラさせながら言った。
「だからさ……」呆れた風のリュウセイ。
「リリカちゃんは、ゲームを渡されたって嬉しくないって言ってるんだよ。本を読む方が楽しいって言ってるんだから。本質的には、ミカンがゲームを取り上げられるのと変わらないよ」
「ホンシツテキ?」
「リリカちゃんが本を取られるのと、ミカンがゲームを取り上げられるのは、同じくらい辛い話だということだよ」
「本とゲームが……同じくらい……?」ミカンが復唱しながら、考える。
「ねぇねぇリリカン」
「何ですか?」
「その本っていうのは、マンガ?」
「マンガも読みますけど……基本的に取り上げられるのは、小説ですね」
「小説って、あの文字がいっぱいのやつ?」
「はい」
「小説と……ゲームが、同じくらい……? んん?」ミカンが首を捻る。
そんな彼女の様子を見て、リュウセイは「もうこれ以上考えなくても良いよ。きっと大人になれば分かるから」と、ミカンの思考停止を促したのだった。
ここまで話が終わったところで、黄色いランドセルを背負った男子小学生がようやく口を開いた。
「ゲーム取られたらゲームしたなる気持ちっちゅうのは、ワイもよう分かるわ。けど、それが何なんや? 何を思って、お前はそんなこと急に言い出してん」
「皆に、その気持ちを理解してもらうというプロセスが大切だったんだよ。ヒカル」
「プロセス?」ヒカルと呼ばれた黄色いランドセルを背負った男子小学生が、先程のミカンの如く首を傾げる。
「ああ」
ソラが頷き、ようやく答えを口にした。
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