6人が本棚に入れています
本棚に追加
「要するにカリギュラ効果っていうのは、行動を規制されると、逆にその行動をしてみたくなるっていう心理効果なんだ」
「へぇー」と、これまで声を上げていた四人に加えて、緑色のランドセルを背負った男子小学生までもが、そうなんだと言わんばかりに声を吐いた。
「勉強にはなったが……けど、それがどしたん? って話やで? 何を思うて急にそれを言い出してん」
「ヒカル、良い問い掛けだ」
「なんやその上から目線な感じは」
「オレたちが住んでるこの山――――天命山には、おかしな伝説があるよな?」
「おかしな伝説……? ああ――【神様降臨】のやつか?」
「そうそれ」正解を言ったヒカルを指差しつつ、ソラはニヤッと笑った。
「あの伝説ってさぁ? やけに、親や先生を含めた村の大人たちが関わること、立ち入ることを禁止してないか?」
「確かに」と、反応したのは緑色のランドセルを背負った男子小学生だった。
「オイラなんて、毎朝毎朝、母ちゃんに言われるよ。『山頂の立ち入り禁止区域には、絶対入っちゃダメよ?』って」
「な? ケンタロウもそうだろ?」
改めて、そう同意を促されると、緑色のランドセルを背負った男子小学生――ケンタロウが「お、おう……」と頷いた。
頷くのと同時に……ここまでの話を脳内で整理した結果、はっ! と、ケンタロウは察する。
「……ま、まさかとは思うけど……ソラ? お前ひょっとして――――」
「多分、ケンタロウの想像通りだよ」ニヤッと笑うソラ。
彼はこう続けた。
「それだけ、伝説への関わりを禁止されたらさぁ? これだけ、『立ち入り禁止区域に入るな』って言われたらさぁ? …………逆にそれ、破ってみたくならねぇか?」
「っ!?」これまで賑やかだった面々の表情が、ギョッとなる。
ソラが続ける。
「……で、さっきヒカルから問われた質問に答えよう。『なぜ、急に、オレが今、そんなことを言い出したのか?』その答えは簡単だ――――」
ソラは言う。
「今から学校サボって、『立ち入り禁止区域』の探索しに行こうぜ」
最初のコメントを投稿しよう!