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「いやいや......」ケンタロウが、冷や汗をかきつつ、ジリジリと後退りをしながら言う。
「いやいやいやいやっ! それはやべぇって!!」
「母さんに毎朝、行くなって言われてるんだろ? だったら、行ってみたくならないか?」
「なるかアホォ! そんな好奇心より、恐怖心の方が勝つわ!! 母ちゃんは! 行ったら駄目だから、行くな! つってんだよ!! だからオイラは行こうだなんて、とても思えねぇよ!!」
「私も反対です」と、リリカが小さく声を上げた。
「ちょっと……怖い……かな?」
「えぇー? そうかなぁ?」
反対意見に対して、反論の姿勢を見せるのはミカンだった。
「ミカンは行ってみたいけどなぁー! 学校サボって遠足行くみたいで楽しそうじゃんっ! みんなで行こ行こーっ!!」
「アホか」
「痛いっ! リューリューがぶったぁ!」
ため息混じりにリュウセイが言った。
「『立ち入り禁止区域』に行くことを遠足なんて軽い言葉で言い換えちゃダメだ。これはそんな、軽い話じゃない」
「リューリューの腰抜けっ!!」
「ダメなものはダメだ」そうミカンに釘をさした後、リュウセイはソラの方へと視線を向けた。
「どうしたんだいソラ? こんなことを提案するなんて……君らしくないよ」
「オレらしくない……か」自嘲のような表情を浮かべる。
「もしかして、昨日のこと気にしとんのか?」とヒカルが言った。
ソラが答える。
その名前の如く、空を見上げながら。
「気にしてない……と言えば、嘘になるな」
「やっぱりなぁ」と、ヒカルはため息混じりに声を上げる。
「お前はそういう奴や。そうやと思ったわ。けどな? んなもんまでお前が背負う必要ないで? アレは、アイツらが勝手にやったことや。勝手にやって、勝手に失敗した。アイツらの責任や。お前がそこまで気にすることはないで」
「分かってる。だけど――――オレが動けていれば、間違いなく、事前に止めることができていた。それは、間違いのない事実だ」
「ソラ……」ヒカルだけじゃなく、その場にいる面々が神妙な表情をつくる。
ソラは言う。
「あの一件が起きたことについて、オレは正直……腹が立っている」
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