日焼けは真夏の勲章じゃ!

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日焼けは真夏の勲章じゃ!

「だって、日焼けしたくないです!」 「日焼けは真夏の勲章じゃ! 日焼けにビビってんなら、家庭菜園は無理!」 「無理じゃないです! ちょっと待っていてください」 「おーい、どこ行くんだー?」 「ほら、ホームセンターで買ってきました……じゃーん!」 「ほう、農園フードか」 「これならフードで首まで隠れて、日に焼けません。八月の太陽もへっちゃらです」 「そこまでやるなら……いいぜ」 「やったー!」 「どうして俺の畑にこだわるんだ?」 「ここの野菜がかっこいいからですよ!」 「かっこいい?」 「さやいんげんは、実がはじけて飛び出そうなほどでかいし、ミニトマトはプリプリつやつや! これなら期待できます。この畑は、才能ある畑です。すごいのができるはずですよ!」 「畑に才能はないよ。持ち主がどれだけ手間ひまかけたか、だ」 「じゃあ、僕もがんばらないと!」 こうして僕、小川蒼太は、小川周平の畑を手伝うことになりました。 おいしいおいしい、げんこつトマトをつくるために。 そしてこの夏は、僕らにとって奇跡の夏になりました。 「猫がきゅうりのネットに絡みつくなんて、びっくりしました」 「蒼太のおかげで、すぐに直せた。ありがとう。よく働くなあ、蒼太は」 「汗をかくくらい体を動かせば、毛穴にいいですから」 「また美肌のためか」 「周平、麦茶飲んできていい?」 「おう、先に家に入れ。俺もあとで行く」 「あった。麦茶……あれ、気のせいかな。まあ、いいや」 キンキンに冷えた麦茶を一気飲みしました。 「かーっ、しみわたる!」 僕は汗をハンカチで拭いながら、テレビをつけました。 「今日からはじまるドラマ、録画するの忘れてたな。ここでも観られるといいなあ」 リモコンをいろいろ押すけど、目当てのチャンネルがわかりません。あとで周平に訊くことにしようと思いました。 僕はハンカチをバッグにしまいました。そして取り出したのは……。 「そろそろ塗り直すか」 「ただいま……って、蒼太。何やってんだ?」 「日焼け止めの塗り直し。汗をかいたら、日焼け止めが落ちるんです」 「はあ、まめな男だなあ」 「あの、周平」 「んー?」 「麦茶、足したんですか? 朝から減ってない気がするんですけど」 「……気のせいじゃないか?」
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