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八月十四日を繰り返す?
「そうかなあ。ところで、ここのテレビ、九チャンネルは観られますか? 今日からドラマがはじまるんですよ。『火曜ドラマ美容男子、参る』って番組です。えっと、新聞、新聞……」
「……ほらよ」
「あれ、番組がない。ん? 八月十四日、月曜日……? 今日、月曜日だっけ?」
僕はテーブルに置いていたスマホを手に取りました。
「あれ、カレンダー表示が消えている……スマホ壊れたかな」
「くそ! やっぱり、蒼太も巻き込まれたか」
「え?」
「繰り返してんだよ」
「繰り返し?」
「俺は、八月十四日を繰り返してるんだよ! ずっと、ずっとな!」
「何言ってんですか! タイムループなんてあるわけないですよ!」
「減らない麦茶! 変わらない新聞! これが何よりの証拠だ! だから……蒼太に畑を手伝わせたくなかったんだ。俺に近づけば、おまえだってループしてしまう!」
「どうしよう、解決策は……」
「何回も八月十四日を繰り返して、俺はいろんな野菜を育てたんだ。でもいくら時がリセットされても、育たないのが……」
「まさか」
「ああ」
僕と周平は同時に言いました。
「げんこつトマト……」
そのとき、テレビ番組がニュースから天気予報に切り替わりました。
『気象情報です。今夜、北海道に台風七号が上陸します』
「やっぱきたか……十四日の夜に台風がやってきて、朝にはループするんだ」
「じゃあ、台風の進路を変えれば」
「できるわけないだろ! それに台風じゃないんだ、問題は……」
夜になると、天気が荒れてきました。
窓ガラスに雨粒が叩きつけられています。その音が激しく、強くなっていきます。
風が、木を揺らし、家の壁に当たります。大きな化け物が雨雲から顔を出して、ひゅうぅっと息を吐いているかのようです。
「風が強くなりましたね」
「そろそろ、起こるぞ」
「うわ!?」
突然、電気が消えました。
「周平、懐中電灯あります?」
「ある。ほれ」
「あれ、つかないですよ!?」
「何!? くそ、今度こそ回避できると思ったのに」
「周平?」
「いつも停電になって、俺は懐中電灯を探すんだ。でも結局見つからないんだ。そのまま眠くなって、気づいたらループしている。今日はあらかじめ店で買ってきたのに、電池を入れ忘れるとは……」
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