1. バトル・オブ・フード 〜コロッケvs.ハンバーグ

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1. バトル・オブ・フード 〜コロッケvs.ハンバーグ

 長らく平和が保たれていた食卓の世界に、突如事件が勃発した。  きっかけは些細なものだった。お皿に乗った今日のおかず達がそれぞれ自分の魅力について自慢しあっていた所、いつもは同席する事はないコロッケとハンバーグの間で意見が衝突してしまったのだ。 「一番目立つのはこのボクだ!」 「いいや、主役は私に決まっている!」  もともと二人はお互いをライバルだと思っていた。それはお互いなんとなく形が似ているからで、両方が自分の美味しさには絶対の自信を持っている。自分の方が人気がある、美味しいのは自分の方だと言い争いは激しさを増すばかり。どちらもプライドが高いので一歩も引かず、ついには戦争にまで発展する事態となったのだった。  そうして迎えた食卓戦争……。コロッケ軍団の戦士たちはサクサクとした音をたてながら突進し、ハンバーグ軍団の戦士たちはジュージューと声を上げながら応戦する。  戦場は熾烈な争いが繰り広げられた。コロッケはハンバーグの熱々の肉汁に苦戦し、ハンバーグはコロッケのホクホクとした湯気に巻かれて苦戦する。途中、冷めて戦力が落ちてしまった時には、新たなコロッケがどんどん揚げられ、また、ハンバーグもどんどん焼かれて戦いは更にヒートアップする。  しかし、どれだけ戦い続けてもなかなか勝負がつかなかった。そうしているうちに段々お腹が減っていき、戦う気力もなくなってくる……。  そこでフワッと漂ったのが、相手が纏う美味しそうなニオイだった。改めて嗅いでみると、それはたまらなく食欲をそそるもので、次第に興味が湧いてくる。やがてはお互いが相手の良さに気づく事となったのだった。  コロッケはハンバーグの程よい焦げ目と溢れる肉汁がたまらなかったし、ハンバーグはコロッケの外皮はサクサク、中はホクホクとした食感にすっかり魅了されてしまった。お互いが初めてその美味しさを認め合う事が出来たのだ。  最終的にコロッケとハンバーグはこの食卓戦争を終結させ、和平を結ぶ事にした。両者はお互いを尊重し、共に食卓に並ぶ道を選んだのだ。  その後、コロッケとハンバーグは自身の特徴を活かした新しい味付けやアレンジにも積極的に取り組んで、共に食卓界を盛り上げた。彩りに溢れた美味しい食事はみんなに笑顔と喜びをもたらす素晴らしいものとなったのだった。
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