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「痛っ」
腕に痛みを感じて見下ろすと服に血が滲んでいた。
すぐに周りを確認して誰にも見られていないことを確認して自分の部屋に戻る。
「力入れすぎちゃったなぁ‥」
部屋で手当てをしながらつい独り言がこぼれ落ちた。
昔は自慢じゃないけどなんでもできた。
運動も勉強も…人付き合いも
親に言われるがまま努力して
自分の悪いところに気付くたびに矯正して
自分自身を殺して年数をかけて作った「完璧」
しかし出る杭は打たれるということわざは正しかったらしく
高等学校に入る頃にはみごとに僕の周りに人がいなくなっていた。
それだけならまだ良かった。
僕が世間一般的にいうぼっちになっても首位を取り続けたことが気に入らなかった一部の奴らが暴力を振るってくるようになった。
「調子に乗ってるんじゃねぇ」
といった言葉を添えて
暴力、暴言が何ヶ月も終わりなく続いているなかで
自分の中の何かが壊れる音が聞こえた気がした。
それから努力しようとするたびに
その思いの強さに応じて体に傷ができるようになった。
1番酷かったのは早く新しい空間に慣れようとしたときだったかな
その時顔の右半分にできた大きな傷の痕が残ってしまい
それを隠すために前髪を長く伸ばした。
幸い今つるんでいる仲間にはこの体質はばれていない。
ばれたとしてもきっと受け入れてくれるだろうということは分かっているが
どうしても昔のトラウマが蘇る。
「俺は弱いなぁ‥」
「なにが?」
「うわっ!!!な、なんだ…驚かさないでよ」
「ごめんって、それより何してんの………は?何その傷」
「いやこれは…なんでもないから…」
「(何でもないわけないだろ…)とりあえず病院行くぞ。事情聴取はその後な」
「事情聴取はするんですね…」
「当たり前だろ、他の奴も呼んどいたから。逃げられると思うなよ?」
「…はい……」
事情聴取(という名の脅し)によって話したことに仲間が怒っているのを見て少し安心したのは内緒。
「俺はこれまで生きてきた人生の中で今この時が1番俺らしい」
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