episode 1

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八嶋(れい)、高校一年生。僕には入学した時から憧れの先輩がいた。それはこの高校の生徒会長である高校三年生の三木隼人先輩である。 「おはよう。今度の会議で使う資料ってもう出来ていたりするかな」 先輩は仕事が出来て人望もある。先輩に憧れて生徒会に入る生徒も多く、生徒だけでなく教師からの信頼も厚い。視線の先の先輩は常に余裕があってかっこいい。「ありがとう、今回のもよく出来ている」と笑顔を見せる先輩に、相手の子は顔を赤らめて俯く。分かる...気持ちは凄い分かる。こんな風に笑い掛けられたら嬉しくてそんな反応しちゃうよなぁ。 「三木先輩。今...時間いいですか」 そんな先輩だから女子には凄くモテていた。いつだって告白されているくらいに。 長い髪を耳に掛けながら気まずそうにそう言った女子生徒を見て、一瞬だけ目を細めて笑顔を見せる先輩。「いいよ、別の場所行こうか」と気を遣ってその場を二人で離れる。明らかに告白である。 (いいなぁ──あんな風に素直に伝えられて) 遠ざかっていく二人の背中を眺めながらそんな事を思う。最近よく思う。もし自分が同じ様に女子だったら....先輩に好きという事も許されたんじゃないかって。同性の僕から好きだなんて言われても先輩を困らせるし気持ち悪いとも思われるかもしれない。だから僕はこうして遠くから眺めるだけで話し掛けたりする事はなかった。 「また先輩観察?」 ひょいと後ろから現れた友人の言葉に思わずシーッと静かにする様にジェスチャーを送る。先輩の姿は既に無かったが万が一他の人に聞かれるのは何となく気まずい。
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