episode 4

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夏前のこの季節には毎年体育祭が行われているらしい。学年毎に種目に参加し、それ以外だと個人で自由に種目に参加するのだとか。あまり運動は好きじゃないので乗り気ではない。でも... 「隼人さん、陸上部だったんですよね?対抗リレーとか出ていたんですか」 「よく知ってるね。流石俺の元ストーカーちゃん」 「す、ストーカーじゃないです!」 いつからやっているのかは知らないが、彼は陸上部に入っていた。先輩が県の大会にも出る程の実力者であるのは皆知っているし、入学した時点で廊下の壁に貼られる校内新聞で掲載されていた。三年生になると同時に現役引退の形になったはものの、たまに部活に顔を見せて走るくらい、陸上は好きらしい。噂で聞いた事ばかりだけど。 「走るの好きだけど、部活で走れるから対抗リレー出た事なかったかな」 「あ...そう、ですよね」 そりゃあ速い人と勝負したいよね...。 でも先輩が走ってる所、見てみたかったな。 明らかにしゅん...と落ち込む僕を見て、資料を眺めていた彼は「まぁ、あれだな」と独り言の様にボソッと呟く。 「高校生最後の体育祭だし....参加エントリーしてもいいかもね。怜ちゃんも、俺が走ってる所見たいらしいし」 「.....!見たい!隼人さんが走ってる所、絶対カッコ良い!」 嬉しさから興奮で敬語が外れて思わず素の調子で言ってしまった。我に返り「あ...」と顔が赤くなっていくのが分かる。ポカンとした後、先輩はブハッと吹き出した後「必死過ぎ」と頭をわしゃっと撫でてくる。面白かったのか彼はまだ肩で笑っている。
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