episode 4

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「はい!大輝は僕の大切な親友なんです」 『そう。親友──ね』 何か含みのある返しをする先輩。思わず「隼人さん?」とベッドの上で寝返りを打ちながら聞くが、物音のみで数秒程沈黙が流れる。そして... 『──もう遅いから今日は寝ようか。暫く会う時間も無いけれど....寂しくて泣かないようにね』 「な、泣きませんよ!もう....おやすみなさい、隼人さん」 そう言って、向こうのおやすみが聞けたと同時に電話を切り、部屋の電気を消す。後一週間程で体育祭か。先輩との最初で最後の学校イベント....楽しみだな。僕は小さく微笑を浮かべると、そのまま布団に潜り込んで目を閉じた。 *** 彼の事を親友と思っているのは怜ちゃんだけなんじゃないかとずっと思っている。 早朝、殆ど人のいない学校に登校し、陸上部の部室へ向かって歩く。昨日は結構遅く迄電話をしたし....きっと起きるのはギリギリになるんだろうな。慌てふためく彼の姿を想像して静かに口角を上げて、部室の扉を開ける。誰も居ないが、人の気配がする。自分以外にこんな早くから朝練に取り組んでいる人が居るとするのなら一人だけだ。静かに着替えて部室を出て、グラウンドに足を踏み入れる。コートでストレッチをする一人の人物が確認出来て、俺はいつも通り外面の笑顔を浮かべ「おはよう、峯岸君」と声を掛ける。ピタッと動きを止めた彼が此方をジッと見つめ、渋々といった感じで「おはよう御座います」と挨拶を返す。
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