episode 4

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峯岸 大輝。 基本的に無口で積極的に他者と関わる事はない。怜ちゃんの親友。実は怜ちゃんと関わる前から彼の事は元々認知していた。女子が、イケメンが入ったきたと喜ぶくらいの人気っぷりだったが、彼は物凄く無愛想だった為、チヤホヤする女子は少なかった。陸上をやっていたらしく、入って間もない一年生にしてタイムは常に更新され続けている。そんな彼は、恐らく俺の事が嫌いである。 「......三木先輩も朝練ですか」 「まぁね。そろそろ体育祭も近いし、身体が鈍っちゃうから練習しておきたいなって」 「......そうですか」 .....やっぱり嫌われてるよなぁ。 話題を振ってきたと思って返してみればこの冷たい応答。きっと怜ちゃんの事が関係しているのは確かなんだけど──確信がないし、迂闊に彼の話題には触れられない。タイマーをセットして彼と同じ様にコートに並び、軽いストレッチをする自分に、ふと彼が小さな声でぼやく。 「──アイツの為に走るんですか?」 「.....!」 ピッとスタートの合図が鳴ったと同時に、自分の反応を見る事なく勢いよく走り出す彼。ハッと我に返った俺は、慌てて冷静になり、思考を空っぽにして走り出す。僅かに出てしまった差を少しずつ埋めていき、最終的にはほぼ同時にゴールする。滴る汗を無造作に拭いながら、横で呼吸を整える彼の背に向かって口を開く。 「──アイツって?どうしていきなりそんな事を...」 「なんて、白々しい。付き合っているんだったら堂々と普段の名前呼びで言ったらどうです」 「!」 怜ちゃん、この子に付き合っている事を言ったのか。....もしかすると俺が考えていた事は当たっているのかもしれない。ある確信に辿り着いた自分は彼に向き直り、真っ直ぐ見つめて「なるほど」と呟く。 「君、怜ちゃんの事が好きなんだ」
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