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prologue
本当に純粋な気持ちからだった。ただ遠くから見ているだけの存在でよかった。僕なんかに関わってくれる訳ないし、そんな機会が訪れるだなんて想像もしていなかった。だからこの展開は予定になんてある筈がなかった。
目の前に立ちはだかるのは満面の笑みの先輩。そして壁に追い詰められた状態で硬直して動けないでいる自分...
場所は空き教室。この空き教室は生徒会室の中の扉の奥にあり、関係者以外は立ち入る事が出来ないだけでなく時間帯が放課後なのもあり、人は基本的に来ない。生徒会長と役員以外は絶対に──
「やっと二人きりだね」
意地悪に微笑む彼はそう言って顔を近付けてくる。顔を背けようと横に逸らすと不服そうに眉を寄せ「冷たいなぁ」なんて聞いてくる。
「最近ずっと避けていたでしょ。えっちなキスをする様になってからかな...分かりやすいくらい避け始めてたよね、八嶋ちゃん」
「僕の事なんか放っておいて──、っ」
反抗しようとすると呆気なく口は塞がれた。顔を真っ赤にしてぷるぷると震える僕を見下ろした彼は心底楽しそうに笑って頬を撫でながら言う。
「八嶋ちゃんってほんと可愛いね」
僕の憧れの三木隼人生徒会長は天使の皮を被った悪魔だった。
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