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「え……、という事は結望と異母兄妹……ってこと?」
「……本気かよ」
「……知りたくなかったな」
昂枝と折成さんはにわかに信じ難いといった様子で頭を抱えた。
「は? つまりなんだ……テメェの実の妹達を生贄にってか? ……頭がいかれてるっ!」
昂枝は自身の太ももを強く殴る。怒りの矛先を身の内に抑えて、何とか理性を保つ。
空砂さんは我々の言葉等に耳を傾ける事はせず、羅刹様と対話を続ける。
「羅刹様、死にたいと仰ったのは本当か? ……羅刹様が死にたいと言ったのも所詮、……生贄が吐いた嘘じゃろう……?」
『……空砂よ、あの娘は嘘を吐いておらぬ』羅刹様は静かに、そして、切実な声で伝えた。『……私はもう、疲れてしまったのじゃ……』
「―――」
『確かに、生きねばならぬ。私が長生きして、鬼族を守っていかねばならぬ――そう思っていた時期もあった。……それ故過ちも犯した事もある。じゃが……、私の中へ入ってきた生贄の意識と対話していく内に、私は間違っていたと。……そう感じたのじゃ』
羅刹様は祠から出てくると、空砂さんの方へ歩み寄るのが見えた。
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