四章

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 ――とはいえ正確には実態が無いのだけれど、婚礼の時に見た朧気で、灰色でいて紫色の様な気配を纏わせたその姿を、空砂さんの方へ行くのを瞳が捉えていたのだ。 「では……儂は、いつから間違っていたと言うのじゃ。今までのは……無意味じゃったと」 『そうでは無い。そうでは無いのじゃ空砂よ』  羅刹様は空砂さんの手を取る。 『私はお主に救われておるのじゃ…。二つの血が流れるお前は、どちらの力も大切にしてくれたであろう』 「……儂は――」 「おい。ちょっと待て」昂枝は手を挙げて、二人の会話を遮る。「話についていけん。空砂、お前は一体何者なんだ」  昂枝は刀を持ったままの状態で、空砂さんの方へと一歩踏み出した。 「儂は羅刹様――鬼族の長である父上と、烏天狗の母上を持つ。それ以上も以下もない」 「は……? 純血じゃないのか?」話を聞いた折成さんも、困惑しながら割って入る。「空砂……さんよ、黙って聞いてりゃ……なんだよ、それ。俺の妹を殺しといて純血じゃなかったのかよ……っ!」 「折成さんっ!」
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