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安全ってそんな、妖は全部が悪者じゃないはずなのに…。
だけど、基本誰も…何も存在しない場所なら、出会った瞬間“それ”が何なのかわかるのではないか。
私は辺りを見渡しながら「さっきのはどなた…? いるなら…出てきてくれると、嬉しいのだけれど…」
と話しかけたところで意味はないとわかっていながらも声を出した。
もし運よく出て来てくれたらどうしよう。触れてみたいという気持ちもあるけれど、動物は迂闊に触ってはいけないと聞いたことがあった。なんでも匂いというのは動物にとって大切で、人間の手が触れるとその匂いがこびりついてしまい、違う匂いを纏ってしまえば仲間の元へ戻れなくなる。動物はそうやって仲間を見分けているのだそうだ。だから、一目見られればそれでいい。
「……いないのかな」
私は奥へ奥へと進みながら呟く。森の中に人が一人しかいないのに、何故か恐怖心はない。人と出会うことが、余っ程怖かったから。
散策を続けている時、ある感触を覚えた。ふわっとしているような、変な感じ。
「何……?」
そう呟いた時、足元が突然崩れた。
「きゃっ!」
小さく悲鳴を上げると、すぐに尻餅を着いた。そこまで落ちなかったようだ。しかし滑った勢いでぎゅっと圧力がかかったのか草履の鼻緒がちぎれてしまう。右足の親指と人差し指に痛みを感じ見てみれば血が滲んでいた。
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