69人が本棚に入れています
本棚に追加
「……外に出た罰…なのかな」
足袋を脱ぐと幹部の近くを指でさする。見てみたいと思った存在は探しても見つからないし、小さな段差で躓いて、なんだか無駄な時間を過ごした気がして溜息をついた。
でも、なんだったんだろうあの変な感触は…。
(……気の所為、だよね)
考えても仕方がないと言い聞かせ、私は立ち上がろうと試みた。
その時―――。
私の目の前に、目を奪われる程美しく、凛々しい。私が探していたであろう動物が現れた。
「……きつ…ね………?」
私は学んだことを思い出す。キリッとした瞳、大きくピンと立った耳、大きくフワッとした尻尾。キラキラと輝く金色の毛並み。それは紛れもなく狐のように感じた。
日差しも木々の間を抜ける僅かな光しかないのに、目の前にいる狐は神々しく見えて動物相手に身構えてしまう。
「……あ、あなた……は………」
そう呟いたとき狐は私へと近づいて、そっと鼻緒擦れを起こした足に鼻を寄せた。
「だ、だめ…!」
すんでのところで避けると、首を振った。
美しい狐は表情は変えずとも、「どうして?」と言っているような雰囲気を感じて「仲間のところ、帰れなくなってしまうでしょう…?」
狐の頭くらいの高さ、視線に合わせて答える。
狐は何も言わずにじっと私を見つめ続けた。不思議な瞳だった。毛並みと同じ金色に、緑、桃が反射する。
しばらく静かに見つめ合うと、狐は踵を返し、走り去って行った。
最初のコメントを投稿しよう!