序章

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「……外に出た罰…なのかな」  足袋を脱ぐと幹部の近くを指でさする。見てみたいと思った存在は探しても見つからないし、小さな段差で躓いて、なんだか無駄な時間を過ごした気がして溜息をついた。  でも、なんだったんだろうあの変な感触は…。 (……気の所為、だよね)  考えても仕方がないと言い聞かせ、私は立ち上がろうと試みた。  その時―――。  私の目の前に、目を奪われる程美しく、凛々しい。私が探していたであろう動物が現れた。 「……きつ…ね………?」  私は学んだことを思い出す。キリッとした瞳、大きくピンと立った耳、大きくフワッとした尻尾。キラキラと輝く金色の毛並み。それは紛れもなく狐のように感じた。  日差しも木々の間を抜ける僅かな光しかないのに、目の前にいる狐は神々しく見えて動物相手に身構えてしまう。 「……あ、あなた……は………」  そう呟いたとき狐は私へと近づいて、そっと鼻緒擦れを起こした足に鼻を寄せた。 「だ、だめ…!」  すんでのところで避けると、首を振った。  美しい狐は表情は変えずとも、「どうして?」と言っているような雰囲気を感じて「仲間のところ、帰れなくなってしまうでしょう…?」  狐の頭くらいの高さ、視線に合わせて答える。  狐は何も言わずにじっと私を見つめ続けた。不思議な瞳だった。毛並みと同じ金色に、緑、桃が反射する。  しばらく静かに見つめ合うと、狐は踵を返し、走り去って行った。
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