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タチアナの父親――ニックは腕利きの科学者で大きな組織に属していたが奇抜な発想や研究内容から仲間に変人扱いされ、ついにはミスを擦り付けられて組織から追い出されてしまった。
以降、その土地から遠く離れた場所で妻のダイアナと二人で幸せに暮らしていた。そんな時に生まれたのがタチアナだ。
ニックは家族のために懸命に職を探していた。妻のダイアナは病弱であったから、栄養価の高い物を食べさせてやりたかったし、どうしても試したい研究もあって、とにかく金が必要だったのだ。
しかし作業のほとんどが機械化されており、人間をあまり必要としない社会での就職活動は難航した。
肩を落とし切ったニックに手紙が届いたのは、どこにも雇ってもらえず、また引っ越さないといけないかも…と思い始めた矢先のことだった。
差出人は他の国の手を一切借りず独自の文化で発展しているという噂のエルドラゴ国の王。この土地に住む者なら知らない者はいないほど偉大な国の王様が一体なんの用だろう?と、ニックは手紙に目を走らせた。
すると、王族らしく文体は丁寧であったが、それとは裏腹に暴力的な言葉が綴られていた。
「『明後日遣いの者を送る。我々に従うならば貴殿およびその家族の生活や病気の治療は保証しよう。しかし、逆らうならば何一つとして保証はしない』…?何だって!?これじゃあ、まるで脅しじゃないか!家族にまで目をつけられてちゃ逆らえるはず……っ!命の保証もないというのか…?言うとおりにするしかない」
半信半疑で怯えていたニックは、いっそのことイタズラであってほしいと思ったが、手紙に書かれていたとおり迎えはやってきた。国王の側近だという。その人物に、手紙に書かれていた"仕事"について尋ねてみたが
「私からは何も申し上げられません」
としか返ってこなかった。
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