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「嘘だろ…?このご時世、ロボットを造れる技術者がいない…?だからって、こんなのアリかよ…」
ニックは、たった今与えられた部屋で頭を掻きむしりながら先程の国王との会話を思い出していた。
「やあやあ。ニック・ハーバート君。遠いところをよく来てくれたね。楽にしてくれたまえ」
「ありがとうございます。恐れながら国王様。最先端で発展しているこの国で私が役立つことがあるように思えないのですが…何をご所望なのでしょうか?」
「それがだな…近う寄れ」
ニックは頭を上げ「はい」と二歩前に出たが王は首を横に振った。
「もっと。もっとだ。余に耳を貸せ」
ニックは「失礼します」と言って王の口元に耳を寄せた。
「この国の民は大勢いる。だが技術が発展しすぎて労働力が足りておらん。そこで貴殿にロボット造りを頼みたい。迅速に作業できる技術者を探したのだが、おらんのだ。こんなこと外に漏れようものなら他国に示しがつかん。秘密は最小限に留めたい。良いか?他言無用だぞ?さもなくば…」
国王の声が低くなったのを聞き、ニックは努めて冷静に「勿論です」と答えた。
「かしこまりました。いかほどご入用でしょうか?少しなら感情のようなものもお付けできますが。笑ったりですとか単純な―」
「感情など要らん!機械は機械!壊れるまで働けばよいのだ!」
張り上げた声にニックがビクッとしたのに気づき国王は口調を和らげた。
「すまない。取り乱したな。そうだな…とりあえず十体造ってもらって試してみたい。作業に集中できるよう個室を用意する。必要な物があれば何でも手配しよう。風呂もトイレもあるし食事も運ばせるから安心してくれ。完成するまで家族と会うことは禁ずる。良いな?」
理不尽な状況であったが、家族のことを思うと逆らうことはできず「はい。国王陛下」と言い、最低限の機材しか揃っていない、だだっ広い部屋に通されたのだった。
作業に没頭できるのは科学者として嬉しいことではあるし衣食住に苦労しないのもありがたいが家族に会わせてもらえないのでは監禁と同じであった。
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