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こうして、ニックは来る日も来る日も作業用ロボットを造り続けた。しかし、試作品の十体を造り終え、次に五体、さらに五体と完成させても家族に会えることはなかった。 そんな中で唯一の楽しみは食事を運んで来る青年、ジャックと仲良くなったことだ。ジャックに家族は元気だと教えてもらった時は、心の底から安堵した。 その頃からニックは発注命令をこなしながら、その合間を縫って以前から試してみたかった研究に取り組んだ。たまに別の素材の注文を紛れ込ませても一人でやっているおかげで誰にも気づかれることはない。費用はすべて国が負担してくれる。 終わりの見えない国王からの発注は、だんだんと複雑化し、召使いを増やしたいとか何とかで、ついには人型ロボットの発注まで来るようになった。「感情は要らん!」というメモ付きで。 そうして数年が過ぎ、いつの間にか国中でニックの造ったロボットが活躍するようになっていた。 一方、ニック個人の研究はというと完成まであと一歩というところまで来ていた。 そんな、ある日の深夜のことだ。ニックの部屋がノックされた。誰かと思えばジャックだった。 「ねぇ。やばいよ。ニックにぃ!ニックにぃの発注に怪しいところがあるって大臣が気づいたみたい!明日には問い詰めに来るかもしれない。あの人、王様と違って頭キレるから…」 「ついに来たか…まだ最後の作業が残ってるんだけど…こうなったら片っ端から入れてやる。残りは少ないし、何とかなるかもしれない。よしジャック。予定より早いけど明日の朝、十時に決行だ。協力してくれるかな?」 ニックは窓際の長テーブルの上の黒い袋を見つめ考えた後、不安そうなジャックに笑いかけた。 「ついにやるんだね!?『ジャック作戦』!勿論、協力するよ!僕の名前がついてるんだもん!じゃあ、これもらっていくね?」 ぱっと顔を輝かせたジャックは慣れた手つきで引き出しからワイヤレスイヤホンマイクを取り出し、物音を立てずに去っていった。
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