インターフォンに映る刑事という男

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 晴美を奥の部屋まで連れて行かせて座らせる尚徳。 「上の階の刺殺事件みたいにとあるマンションで殺人事件が起きて。とある住人が今のようにインターフォン越しに警察から事情聴取を受けるんだよ」  ああ、とようやく晴美は思い出した。何かのバラエティ番組で芸人さんが話していたことを。 「たしかその人はエレベーターで誰かとすれ違ったと話をしたらインターフォンで話してた警察の人が詳しくお話聞いていいですか? と聞かれたけどやっぱりなんかおかしいし、不気味だからと出なかった」 「そう。で……その日はその警察の人をあげなかった。したら後日……」 「その警察の人が後日逮捕されて犯人だったという……」  2人は目を合わせて同時に声を出した。晴美は青ざめる。 「だから晴美、さっきあの警察らしい人を入れていたら……」 「えっ、でも尚徳いるじゃん」  と案外あっさりと晴美は言うものだから尚徳は驚く。 「あ、いや……2人いても強靭な敵だったり、後ろの方に何人かいたら2人とも襲われてしまうよ」 「そ、そうだけどもなんとかなるでしょ」 「なんとかなるのかなぁ……」 「だいたい刑事ドラマの展開ってそうでしょ? ギリギリのところでなんとかなる」  そういえばこの晴美という女は大の警察ドラマ好きであった、というのを尚徳は思い出した。 「警察ドラマは警察ドラマなんだよ。実際はもっと違うだろ」 「そうかしら、都市伝説とか言われるさっきの話も主人公は救われてるでしょ。だからさっきの刑事さん、呼び止めましょうよ」 「いや、なんで呼び止めるの? 晴美は犯行時刻の時間である夕方にはいなかったんだろ?」  晴美は頷いたが上にカーディガンとズボンを着込んだ。  流石にキャミとショーツだけで外を出るわけにはいかない。  尚徳もなんならボクサーパンツだけだ。 「そうよ。でも夜8時に帰ってきた時にエレベーターに乗った時に、誰かと乗り合わせて。黒ずくめの多分男の人。左手に包帯を巻いて……怪しい人だと思ったけどね。その人は私に身を隠すように隅っこに立って下の階に着いたらサーって、おりていったの」  尚徳の顔は青ざめた。 「……そ、そうなんだ」 「そう」 「でも刑事呼んだら……辞めようよ。晴美!」  晴美は肩をつかまれる。彼女の掴んだ尚徳の左手は包帯を巻いている。彼は先日仕事中に怪我をしていた。  利き手の怪我だったため、つい癖で手が出てしまったが力を入れたら痛んだ。 「なによ、この浮気男」  晴美は睨んだ。 「あの女死んでも懲りなく他の女の家に浮気しに行って」 「……晴美……やっぱりお前」  晴美は尚徳に近づく。  そう、晴美がこのアパートで起きた殺人事件の犯人なのだ。
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