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3 処刑
シルフィリアは、処刑を告げられたとき、凪いだ気持ちでその宣告を聞くことができた。
シルフィリアは亡国の姫であり、女性の捕虜だ。若く見目麗しく、自分の存在が、男の気を高ぶらせるものであることを、彼女は知っていた。
しかも、彼女を捕らえたラグナ王国は、他国と比べて、人一倍欲望に忠実な国民性を持つ。そのラグナ王国の捕虜となった時点で、処刑前にいろいろな意味で嬲られるであろうことは覚悟していた。
十七歳のシルフィリアに実際にその事実を受け止められる強さはなかったけれども、頭では自分の未来を理解していたのだ。
しかし、意外なことに、シルフィリアはいまだ純潔であった。
それだけでなく、暴力も受けておらず、手ひどい尋問もなく、弟や従弟を引き合いに脅されることもなかった。
ただ、治癒の力を持っているのかどうか、それだけ聞かれ、首を横に振ったのみだ。
その結果が、三人揃っての公開処刑である。
落ちてくる刃で、一思いに首を落とす予定らしい。
(なんて、温情……)
シグネリア王国は小さな国だ。生き残りは居るだろうが、国民の多くは殺されてしまった。
父王も王妃の母も、最前線に行ったきり帰ってこない。
――助けは、来ない。
そんな中、一番に懸念していたのは、『飼われる』未来だった。
シルフィリア達王族は、治癒の力をその血に引き継いでいる。王族でなければ、国としての庇護がなければ、シルフィリア達緋色の一族に人権はないのだ。治癒の力を持つ者を生み出す道具として扱われる未来は、想像に難くない。特に、シルフィリアは女性であったため、欲望のためではなく、子を成すために凌辱され続ける可能性があった。
それを思うと、あっさりと処刑されるというこの結末は、何よりも最良のものだった。
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