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ーー後日。
事の真相が明らかになった。
あの美影という女は、実は会社の副社長の娘で、何かと揉め事を起こしては、副社長の兄である社長が裏で揉み消していたようだった。
社長兄弟の父親は弟の副社長を溺愛しており、社長とは名ばかりで、実権は副社長が握っていたらしい。ブラック会社の原因は全て、副社長にあったのだ。
社長は、会社を変えようとしていた。このところ残業が増えたのも、社員に苦労をかけて申し訳ないと思いながらも、自分が新たに立ち上げる会社のために、引き抜きたい社員を見極めるためにやっていたことだったらしい。
「飯島、悪かった。大変な目にあわせてしまって」
改めて社長は俺に頭を下げに来てくれた。
「いえ、もう大丈夫ですから。頭を上げてください」
「飯島を撥ねたのは、美影にいい様に使われていた男だった。美影が飯島を好きだと言うから、頭にきて狙ったようだ」
「そうだったんですね……。でも、生きてて良かったです、俺。今度は社長に恩返しをさせてください。一生懸命働きます」
「飯島、まずは身体を治せ。リハビリも頑張ってくれよ。期待している。それと……」
社長が何やら言いにくそうに切り出した。
「オレにも娘が居てな。親バカだろうが、いい娘なんだ。飯島さえ良ければ、今度、食事でもどうだろうか?」
……正直、女はもうしばらくいいかな、と思っていたが、この社長の娘なら、いい関係になれるかもしれないな。
「退院したら、ぜひ」
「飯島、ありがとう」
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