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送ってこうか?
「こんなところで何してるの?」
からかっているような、心配しているような優しい眼差し。
何故か泣きそうになった。
維紗が目線を合わせるように屈む。
雨が、傘の下に二人を閉じ込める。
近すぎる。私は目をそらして、
「なんでここにいるの?」
「朝、図書室にいたから放送が聞こえなかったんだ。」
図書室ってよくスピーカーの音、切ってあるから。と付け足される。
雨の音がうるさい。維紗が私の方に近づいた。
「今日は自習の日だったから、図書室で勉強してて。司書の先生に見つかって摘み出された。」
そう言って照れたように笑った。
つられたように私も笑う。心が少し軽くなった。
「歩いて帰るの?」
私が聞くと、
「15分くらいしたら車が迎えに来てくれると思う。それより、美緒ちゃんはここで何してたの?」
維紗が私の目を見つめている。
「あの、迎えが来るまで待ってようと思って・・・・・・。寒かったし何か買おうかなって。」
「迎え、いつ来るの?」
なんと答えるか迷った。正直に言えば、いつ迎えが来るのかはっきりとはわからない。だけど、もしそう言えば余計な心配をかけるのではないか。
「送ってこうか?」
「え、でも・・・・・・。」
『そこまで甘えるわけにはいかないので大丈夫です。』
言いたいのになぜか言えない。維紗の真っ直ぐな目で見つめられ、どうかしてしまったのだろうか。唇がかすかに震え、なぜかまた泣きそうになった。
維紗はそんな私の様子を見て、
「取り敢えず屋根の下行かない?」
優しく腕を引っ張った。
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