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私の気持ち?
自分が、巻き込まれている厄介事を再び思い出したのは、2,3日たった日の朝だった。登校して来たときに、下駄箱で誰かが話しているのを聞いたのだ。
S組の王子、3年生の彼女と別れたらしい。しかも新しい彼女ができたって。
話していたのは他学年の男子だ。
そんなに噂が広まっているのか・・・・・・。
少し気をつけたほうが良いかもしれない。そう思ってはいたのだが・・・・・・。
それが起こったのは昼休みだった。何か起こるのはいつも放課後か昼休みで、またか、と思ったが、それ以外の時間は授業中なので仕方ない。
「2年C組のリナって子らしいよ。」
「え!王子様の新しい彼女?」
「そう、先輩から聞いたから多分ホント。」
「へぇ〜。」
「なんか、先輩が今日の放課後、会議室横の空き教室来いって。」
「それって、やっぱりそういうこと?」
「うん。そういうこと。」
昨日も新しい彼女の噂をしていた彼女たちは、そう言って意味ありげに目配せし合っていた。
C組。リナ。そんな子いただろうか。第2学年は全部で250人いるから知らない子がいても不思議ではない。
美緒は、自分のことがバレなかったことにホッとしつつ、リナと言う子のことが気になった。どういう経緯でそんな事になったのだろう。会話の中のそういうことというのも気がかりだ。
色々考えているうちに、時間は過ぎ、あっという間に放課後になった。
(どうしよう。下手に出ていけば自分のことがバレるかもしれない。でも、知らない子が自分のせいで面倒事に巻き込まれるのを黙って見ていて良いのか。
いや、そもそも私だって巻き込まれたのだ。)
どうすべきか心音に相談したかったが、今日に限って心音は風邪で休んでいた。
(一旦行ってみて、もしバレたら付き合ってないことをはっきり言おう。)
気付くと私の足は会議室がある方に向かっていた。
会議室横の空き教室。あそこだろう。まだ誰も来ていないようで、あたりはしんとしている。その静けさが逆に不気味だ。やっぱり戻ろう。
そう思った時、急に横から腕を掴まれた。
「先輩!この人ですか?」
私の腕を掴んでいる女子が見た方。廊下の曲がり角の影から本郷サラが姿を表した。彼女は私を見ると、意地悪な顔で笑った。獲物を仕留めた獣でもこんな顔しない。せっかくの美人が台無しだ。
「ホントに維紗と付き合ってるの?」
第一声はそれだった。付き合っていることを、疑ってくれているのはありがたい。
「付き合ってません!!」
食いつくような勢いで返す。ところがサラの反応は期待していたものとは違った。つまらなそうに、ふぅ〜ん。と言うと、値踏みするような目で私を見た。
しばらく考えて、
「別にね、付き合ってても付き合ってなくても、どっちでも良いし、振られた事自体は、もう諦め付いてるんだけどね。」
そこで言葉を切って、私を見る。見ると言うより、睨んでいると言ったほうが良いかもしれない。
「私が、彼氏を別の女に取られたって噂が、学校中に広がってるの。知ってる?」
下手に答えるわけにはいかない。私は黙ったまま彼女の目を見返した。ここで怯みたくはなかったし、あくまで私は被害者だ。
「私としては、結構屈辱的なんだけど。どうにかしてくれるわよね?」
(童話に出てきた、悪い継母みたいだな。)
こんな時にかぎって呑気な感想しか出てこない。逃げようにも、いつの間にか現れた、サラの子分たちが周りを囲んでいる。
「ミーちゃん?こんな所で何してるの?」
突然、緊迫した空気が破られた。
(この声は!!)
その場にいた全員が振り返る。
水無瀬維紗が私に眩しい笑顔を向け、手を振っていた。
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