学校の”王子様”

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学校の”王子様”

「おはよー!美緒?み〜お!」 朝。 心音は登校してくると真っ先に私のところに来る。 「どうしたの?本も読まずにボーっとしちゃって。」 「んー。何にもないけど?」 「ホントに?」 「うん。」 「そっか。何かさ、昨日もお金拾いに行った後からちょっと様子、変だったから何かあったのかな?って。」 「え?」 私が驚くと、心音が不思議そうな顔をした。 「あ、えっと、私そんなに分かりやすかったかなぁ・・・・・・。」 「やっぱり何かあったの?」 心音がなぜか嬉しそうに笑う。仕方なく、私は昨日の出来事の一部始終を話して聞かせた。 「ナニソレ。」 「えっと、それは何に対しての?」 「全部!だって美緒、恋愛は興味ないとか言っておきながら、なんでイケメンに壁ドンされてんのよ!」 「だからそれは別に、好きになってとかそういうのじゃないし・・・・・・。」 心音がなんとも言えない顔で私を見る。 まずい。噛みつかれる前に話題を変えないと。私は脳をフル回転させて話題を探し出す。 「それでさ心音、イサって人知らない?」 「イサ?それってあだ名じゃなくて名前?」 「多分。」 心音は少し考えて、 「その人かわかんないけど、ウチらと同じ2年生に“水無瀬 維紗(みなせ いさ)”って人がいるっぽいよ。」 「“いるっぽい”って?」 「いや、その人S組だから・・・・・・。」 S組。聞いたことはある。偏差値が70より高い人だけが集められていて、普段、一般クラスと関わることはあまりない人達。教室も少し離れたところにあって、たまに見かけることがある程度の存在だ。 「しかもさ、」 心音が声をひそめる。 「水無瀬イサのお父さんって製薬会社の社長らしいよ。」 「え??じゃあ、もしかしてあのミナセ製薬の?」 心音は頷くと、噂だけどね。と付け足した。 2年生だったんだ。付き合っていた彼女は3年生だと言っていたから、彼も3年生なのだと思ったのだが・・・・・・。 (まぁ、同い年でも雲の上人ってことには変わりはないけど・・・・・・。) 「何で心音は知ってるの?」 「だってうちの学校じゃ有名じゃん。S組の王子って。まぁ、実物は見たことないけど。」 「S組の・・・・・・。聞いたことないよ?」 「美緒、現実世界に興味ないもんね〜。」 心音の口調は呆れたようではあったけど、バカにした感じは一切ない。私はそういう心音の優しさが好きだ。そんな事を考えていたら不意打ちを食らった。 「ホントは好きになっちゃた?」 「なってない!」 脊髄反射の速さで反論する。 「ただ・・・・・・。」 なにか言いかけて口ごもる。ただ、何だろう。私は一体何を言おうとしているのだろう。喉の奥で唸る私を心音が楽しそうに見ている。 「はぁー。」 「おっ!それって恋のため息?」 完全にからかわれてるな。なにかいうと更に喜ばせかねないので、私は何も言わないことにした。
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