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いつもと違う昼休み?
昼休み。
心音は珍しく、無言で携帯を見ている。てっきり朝の続きで、またからかってくると思っていたので拍子抜ける。わざわざ見し返す理由もないので、私は横で大人しく本を読んでいた。さっきからずっと同じページで止まっている。何故か読む気がしなかった。
「えぇ〜!サラ先輩、それってホントですか!?」
突然廊下に大きな声が響く。サラという名前に、思わず聞き耳を立てる。
声が大きいよ!と誰かが言って、話し声が小さくなった。
私は少し廊下の方に体を傾け神経を耳に集中させる。
「昨日って急じゃないですか?それに先輩、彼氏さんとはうまくいってるって・・・・・・。」
「まーちゃん、まず聞いて。」
どうやら何人かの女子が集まっているようだ。
「別に理由があるわけじゃないんだけどね、・・・・・・かなぁ〜って思って別れた。」
この声には聞き覚えがある。この前10円を拾いに行ったときに振られていた女子だ。
「でも先輩、・・・・・・“S組の王子”・・・ですか!もったいないですよ!」
S組の王子!話の内容が気になるが、少し声が聞き取りにくい。ふと見ると、心音も真剣な顔で耳を傾けている。心音と目があった。
『例の彼女?』
小声で確認してくる。私は頷いて見せる。
「・・・・・・キッカケって・・・ですか?やっぱり・・・・・・ですか?」
「そうね・・・維紗が・・・・・・それで私は・・・。・・・・・・。」
「・・・・・・!?」
ダメだ。よく聞こえない。
「あ!ヤバいもう教室戻んないと!じゃあ、放課後部活でね!」
突然はっきりと彼女の声が聞こえた。集まりが解散していくのがわかる。私は心音と顔を見合わせた。
「全然聞こえなかった〜。」
「私、だいたい聞こえたよ〜。」
心音の言葉に思わず食いつく。『教えて!!』と私が勢いよく言ったので心音がのけぞった。
「そんなに気になるの?」
心音がニヤニヤと笑って言う。
「まぁ、そんなに大したこと話してなかった。まず、付き合ったキッカケはあのサラって娘が、去年の文化祭で水無瀬くんを見かけたこと。俗に言う一目惚れってやつかな?そっから猛アピールして、何だかんだで付き合えたみたい。」
そこで心音は言葉を切って、水筒からお茶を飲んだ。
「彼の方はS組だから、普通のカップルみたいにはいかないけど、それなりにお互い楽しくやってたみたい。まぁ、彼女の主観だからホントはどうだか知らないけど。だけど昨日、彼女曰く突然振られて、今めっちゃ腹を立ててる。っと、こんなとこかな?」
質問は?心音が目で聞いてくる。
突然振られた?何があったのだろう。やっぱり本当は彼は彼女のことが好きじゃなかっとのだろうか。それとも彼には危険が迫っていて、彼女が一緒にいると巻き込んでしまうから・・・・・・。いや、それじゃ面白くない。やっぱり、
「ねぇ、美緒?今、なんか変なこと考えてない?」
「あ、バレた?」
「どうせ、本当は好きじゃなくて、とか危険が迫ってて、とか考えてたんでしょ?」
「すご〜い!なんで分かるの。」
「そりゃあ、美緒の考えそうなことくらい分かるわよ。」
お互いの目を見つめ合って、同時に吹き出した。誰かと笑うのって、楽しい。チャイムが鳴るまで、私達は笑っていた。
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