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このトキメキは恋じゃない!? その2
立ち上がりかけた私の手を維紗が掴んで引き戻す。
「え、」
「怪我したんじゃないの?さっき落ちた時・・・・・・。」
一度目を伏せてから私を見る。
「無理して歩かない方が良いと思うよ。さっきからずっと右足首、気にしてたでしょ?」
気付いてたんだ。その観察力に舌を巻く。確かに右足首がズキズキと痛んでいて、気になってはいた。改めて見てみると擦りむいていて、少し腫れているようだ。動かしてみる。大丈夫そうだ。少し痛むが骨折などはしていないようだ。
「これくらい平気。それに今日は急いでるので。」
立ち上がる。
「あ、」
どうしよう。思ったより痛いかもしれない。維紗は黙ってこっちを見ている。
「いいよ、無理しなくて。貸して。カバン持つ。」
ためらう私に構わず、維紗が半ば強引にリュックを引き取った。
「肩、貸す?」
「大丈夫です!!」
階段くらい片足で降りられる。そう思ったけど、思ったより大変だ。維紗が私のゆっくりな歩みに合わせてくれる。
「ごめん。ちょっとここで待ってて。」
そう言うと維紗は、一段とばしで階段を降りていった。どうしたんだろう。
「お待たせ。」
カバン、置きに行ったんだ。階段を駆け上がって、私の所まで来る。たったそれだけのことが妙に爽やかなのはどうしてだろう?維紗が身をかがめる。
「掴まってて。」
「え?あ、待って!」
維紗は私を軽々と横抱きに抱き上げると、慎重に階段を降り始めた。その足取りは確かで安心感があった。だけど、恥ずかしくてしかたない。
「自分で歩けます!」
「階段下までだから・・・・・・。ほら、もっとしっかり掴まって?」
私はそろそろと維紗の首に腕をまわす。彼がクスリと笑った。
「照れてるの?」
何と答えていいかわからなかったので、私は首をひねるようにしてそっぽを向いた。これでは照れてると言っているようなものだが、別に私は維紗に対して照れているわけではない。維紗が永瀬くんに似ているから、ドキドキしているだけだ。一人悶々としながら、美緒は少し以外にも思っていた。私は維紗のことをその外見と印象から、勝手に自己中心的なあちら側の人間だと思っていたのだが、どうやらそうでもないようだ。まぁ、この抱き方といい、距離感は少しおかしいのだが・・・・・・。
「降ろすよ?まだ掴まっててね?」
階段下、1階の廊下にフワリと降り立つ。維紗が置いてあったリュックを取ってくれた。
「あのさぁ、美緒ちゃんてさ、・・・・・・。」
「あ!色々ありがとうございました!もう大丈夫です。」
これ以上はどんな顔をして一緒にいればよいのかわからない。私は何か言いかけた維紗の言葉を遮り、急いで退散した。
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