【5】初めての遊び

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【5】初めての遊び

「やほ! 亜香ちゃん」 「お! 莉咲来たか!」  亜香ちゃんとの集合場所で少し話をし、歩き出した。  今からギッサと遊ぶんだ……!  今日は私と亜香ちゃんとギッサの三人だけど、いつか二人で遊びたい。  欲を言えば、その時は恋人として……って、夢見すぎ。 「うわあああ……ギッサと遊ぶんだ……。緊張する」 「私も緊張する……。クラスメイトとあんまり話してないから……」 「大丈夫! ギッサなら、きっと仲良くなれるよ!」  ギッサは、いろんな男子と仲良いし。  人に嫌われてないし。  なんなら人気者だし。  バスに乗り、駅に着いた。  緊張しすぎて心臓が破裂しそう。いや、爆発か。  どっちでもいいけど。  三十分待ってみたけど、来ない。  家知ってるなら突撃したいけど、知らないしな……。 「あと十分ぐらい待って、来なかったら二人で行く?」 「おけ。何話す?」  亜香ちゃんは幼稚園からの幼馴染。  だから話のネタが無くても、適当に話してる間に出てくる。  そして、すごい話が弾む。  もうすぐで十分経つ時、一回外に行ってみようか、ということになった。  猫のオブジェは外にもあるし、間違えてそこに行ったかもしれない。  外に行ったけど、いなかった。  二人で遊ぶかという話になった時、数メートル先に、見覚えのある人影を見つけた。  ……ギッサだ。  嬉しさと恥ずかしさが急に込み上げてきた。  服、大丈夫かな。髪、変じゃないかな。  そう思って止まろうとしたけど、そうしたらギッサが遠くに行くかもしれないと変な恐怖がきた。  私はギッサに向けて駆けた。 「ギッサ!」  腕を掴もうと思ったけど、まだそんな親密な仲じゃないから、カバンの紐を持った。 「どこ行く?」 「どうする?」  あっ……。  大事なこと忘れてた……。  そうだそうだ。ここでする事考えてなかった。 「とりあえず、色々まわってみる?」 「そだね!」  二階を一周、三階を一周……なんて繰り返してたら、散歩みたいになった。  歩きながら改めてギッサを見る。  始めて見たギッサの私服。  どんな服でもギッサはカッコいいなぁ……。 「亜香ちゃん、てかさー」 「アハハッ!」  ダメだよ、私。  亜香ちゃんだけじゃなくて、ギッサとも話さないと。  恥ずかしさでギッサの顔すら見れない。  外に出て、歩くことになった。  これじゃあ散歩じゃん……。  右にいるギッサを見た。前髪を押さえている。 「……ハハッ」  急に笑い出したことに驚いたのか、二人は私を見た。 「なんかギッサ……、河童みたい……。アハハッ」  もうすぐでツボりそうな私を見て、ちょっと笑いそうな亜香ちゃん。  ちょっと怒りそうなギッサ。 「河童じゃなくてイモムシかな?」  どこがだよ、と自分で突っ込む。  人をイジるのって、こんな感じなんだな。  ちょっと楽しいかも……。  いや、最低か? 自分。  数時間後。  あの二時間後、二人と別れて家にいた。  はぁ……。  今日の私はダメダメだったな……。  ギッサにあんまり話しかけないし、イジリ散らかすし。  相手を好きだとしても、人としても、ダメだったな。  こんなんじゃ告白しても振られるよ……。  またいつか、遊べる日が来たらな。
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