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【6】夏休み前の悲劇
始めて遊んだあの日から、色々あった。
三回ぐらい(いや、それ以上かな)遊んだ。
とても楽しかった。
夏休みが始まる一週間前。
今日も朝早く学校に着いた。
野栄君が来て、高倉が来て、和香ちゃんが来て……。
「おはよー!」
「おはよ~、大景ちゃん」
和香ちゃんと話していると、登校完了の時間になった。
席に座って周りを見た。
妙だ。妙すぎる。
——ギッサがいない。
まさか、そんな、休みとかないよ、ね?
寝坊して、遅刻だ、よね?
焦りながら、祈りながらも始めた朝の会。
「先生から。先生、お願いします」
先生、本当にお願いします……!
「今日は、可佐木さんと古坂さんが休みです」
……!
なん、だと……?
古坂ちゃんは友達でめっちゃ仲良いから、そりゃあ嫌だけど。
ギッサが休みとか、学校来る意味ないじゃん。
ほとんど土日じゃん。
「大景ちゃん、今日可佐木さんが休みだね……」
朝の会が終わった後、和香ちゃんが話しかけてきた。
「そだね」
「寂しいね~」
「……別に、寂しくないし」
寂しいよ。すっごい寂しい。
「本当?」
「……いや、ちょっと寂しいかな」
和香ちゃんと話していて、私は思い出した。
そうだ、和香ちゃんとはもう、会えなくなるんだ。
いや、会いにくくなるんだ。
一学期の始めに先生が言ってた。
「和香さんは、一学期いっぱいで転校します」って。
今日は、夏休みが終わる一週間前。
つまり、和香ちゃんと会えるのは、あと一週間なんだ。
寂しいな……。もっと、学校で、恋バナしたかったな……。
二学期にある、野外学習で一緒の班になりたかったな……。
「和香ちゃんてさ」
「うん?」
「校区内である夏祭り、行くの?」
私は、留愛と花夜と三人で行く。
もしも来るのなら、話したいな。
「うん、行くよ」
夏休み始まっても、少し会えるんだ。
ほっとした直後、ある事を思い出した。
「ぴーなっつと行くの???」
「えっ」
そう。和香ちゃんはぴーなっつと付き合っているのだ。
知った時は驚いたけど、お似合いだと思う。
いや、めちゃお似合い。
へぇ~? 行くんだ~。
楽しみだなぁ。夏祭りで二人と会うの。
次の日。
今日も朝早く学校に行った。
ギッサ来るかな~、と思ったけど来なかった。
ま、まさか、流行りの感染症になったとか、言わないよな……?
今日も朝の会の司会をし、先生お願いしますと言った。
二日間休みとか、心配すぎる。
先生、本当に頼む! 感染症にかかってないよな……?
「古坂さん、体調大丈夫ですか?」
「はい」
「可佐木さんは今日も休みです」
ぎっさは人気者だから、「え~?」と声があがった。
「感染症にかかりました。ちなみに日曜日まで外に出れないだそうです」
先生のその言葉を聞いた瞬間、口から魂が抜けそうだった。
待ってよ、先生。感染症とか、嘘、だよね?
でも、あまり休まないギッサが二日間休むとか、感染症しかないよね。
はぁ……。嫌だなぁ……。
朝の会、一時間目の準備が終わり、私と和香ちゃんと古坂ちゃんの三人で話していた。
「昨日大丈夫だった? 古坂ちゃん」
「うーん……。でも今は大丈夫だよ!」
「良かった~」
古坂ちゃんは大丈夫みたい。
いつもみたいに笑ってる。
「それより、大景ちゃん。可佐木さん感染症かかってるけど……」
「あ、うん……」
「感染症にかかったら、一週間休まなきゃなんでしょ?」
あ……そうだ……。
てことは、一週間会えないんだ。
学校で、会えないんだ……。
「ギッサ、大丈夫かな……」
「夏祭り、行く約束してたんでしょ?」
「うん。でも、行けなくなちゃったな……」
あーあ。最悪。
「告白するつもりだったのに……」
私がそう言うと、二人は「えっ⁉︎」と声をあげた。
「ちょっと待って? 告白⁉︎」
「え、うん」
「夏祭りにするの⁉︎」
「しよっかな~って……」
でもギッサが祭り行けなかったら無理だよね……。
二人は驚いた顔をしていた。
でも、私に向けて言った。
「「頑張ってね!」」
「えっ、うん」
まぁ、無理なんだけどな……。
また夏休みに会って、いつか告白しようかな。
でもこんな私だから、出来ないよね……。
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