日常になりつつある非日常

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学校から近いスーパーまで来た。 買い物客のほとんどは主婦で、制服を着た高校生男子2人は浮いていた。 僕の隣に視線を向けると、スーパーという場所が全く似合わない蒼介が、何故か楽しそうにカートを押しながらキョロキョロしていた。 野菜コーナーでミニトマトをカゴに入れて、次は鮮魚コーナーで茹でた毛蟹を見つけて、蒼介がカゴに入れてようとしたのを僕は止めた。だって蟹1杯2980円。それを3杯入れようとしたんだ。 「俺が買うんだから良いのにぃ」 そう言いながら笑ってた。 次は鶏肉をカゴに入れた。 「本当に親子丼でいいんですか?違うのでもいいんですよ?」 「うん、親子丼好きなんだぁ。あと、お惣菜見ていこう?」 惣菜コーナーでは、メンチカツに値引きシールが貼られていた。そのメンチカツを蒼介が手にした。 「これ美味そう。海里、これ買ってこう?」 ニコニコしながらカゴに入れていく。なんだか可愛くて思わず笑ってしまう。店内をグルッと見て回り、最後にアイスの冷凍庫を見ていた。 「暑いからアイス食べながら帰ろうか。海里はどれがいい?」 「えっと、じゃあ ソーダーアイスで」 「あ、俺もこれ好き。俺もこれにしよ」 会計は全部蒼介が払った。僕も半分出すと言ったのに、作って貰うから良いと言って、受け取って貰えなかったし、買い物袋も持ってくれた。 これをデートみたいだと思って、舞い上がってしまいそうになる。が、思い上がりが過ぎると恥じてしまう思いもある。 2人で出かけられて楽しいが、蒼介にはいくらでもそういった相手がいるだろうし……。 それでも僕は、蒼介との僅かな距離感に嬉しかったし、楽しかった。 帰りはアイスを食べながら、他愛のない会話をして自宅にあっという間に着いてしまった。  
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