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※ お泊まり
※ 一部 修正しました。
僕たちは先に晩ごはんを食べ、片付けをしてからリビングのドアを開けた時――――。
「ただいま、…あ?2人揃って俺の出迎え?」
玄関で靴を脱いでいた兄の慎理が僕たちを見て驚いていたが、直ぐに笑ってそう言った。
「波多野また来てたのか?ってかさぁ、お前らホント仲良くねぇ?なに?どっか行くの?」
「―――ん。今日 海里は俺の家にお泊まり。なんかあったら連絡ちょうだい」
飄々としながら蒼介は言う。
「はぁ?何をツラーと言ってんの?これからお泊まりだなんて進展早くね?まぁ、いいんだけどさぁ」
「羨ましいの?でも、松田は連れて行かないよ?」
「全然 羨ましくねーし!いかねーし!おい波多野」
「ん?」
急に真顔になった兄は、人差し指を蒼介の胸元に当てる。
「―――海里を泣かすなよ?」
「……うん。分かってる」
そうハッキリと言ってくれたのは嬉しいけれど、その会話にドキッとした。
もしかして兄は全て察しているのだろうか。不安になり兄を見上げた。
「海里、心配すんな。母さんたちには俺から言っておくから」
そう言って兄は笑った。
あやふやになってしまったけれど、帰ってから話をしようと思った。
そんなやり取りをしてから、蒼介が住む、1人暮らしにしては広いマンションに今来ている。
両親は離婚して、お洒落なデザイナーズマンションを与えられ優雅な1人暮らしだと、ここに来る途中で話してくれた。
「両親が金持ってるから生活費は2人から貰えてるし、優雅に気ままに暮らせてるよ。
場合によっちゃあ 更にここは便利屋だしね?」
冷蔵庫から水のペットボトルを持って来て、ソファーに座る僕に寄越してくれた。
意味深にニヤリと笑ってはいたが、どこか自傷めいた、そんな言い方だった。
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