はじまりは…

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はじまりは…

罰ゲームに負けて僕と佐久間は、売店横の自販機で飲料水を買って、教室に戻る途中だった。 僕はふと立ち止る。 廊下の窓越しを見上げると外は曇り空で、今にも雨が降りそうだった。 自宅に着くまで降らないでくれよと思いながら、そのまま校舎の廊下を歩いていた。 キャッキャッと遠巻きで騒いでいる女子の視線の方を見てみると、この高校で良い意味でも、悪い意味でもやたらと目立ち、一目置かれる存在である1つ上の有名人、波多野 蒼介先輩が数人の男女に囲まれて談笑していた。 ……ハーレム状態だな。 別に僕には関係ないけれど。 何となく先輩の姿を目で追って立ち止まって見ていると、楽しそうに笑っているにもかかわらず、目が笑っていないような気がした。 「海里、早く来いよ」 「ごめん、待って」 先輩がこちらを見そうになり、さっと視線を逸らして、 僕はそのハーレムを足早に通り過ぎ、佐久間の方にバタバタと駆け寄った。 先輩の視線が僕の背中に感じたのは気のせいだろうか――――… そして、次に波多野 蒼介先輩を見たのは、突然の夕立に襲われた日だった。 校舎の昇降口で、いつまでも降り止まない雨にうんざりし、濡れてもいいから自宅まで走って帰ろうと意を決した時、誰かが腕を掴み、声をかけてくれた。 「はいこれ。良かったら俺の傘使いなよ」 振り返って見上げると、そこには180㎝はあると思う高身長な人。波多野 蒼介先輩がにこやかに立っていた。
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